【RM#17】Rolf Movement – Part 2(3)〜いい意味での混乱+Tonic Functionについて

Rolf Movementのトレーニングも5日目が修了した。ちょうど半分まで到達し、ワークショップでは今まで学んだことへの振り返りを行なった。

今回のPhase 2は、Phase 1と比べRolferとして10日間のうち6日間、セッションを提供する形をとるので、より実践的な内容になっている(詳細は「自分の身体の状態がセッションに反映される」参照)。

基礎トレーニングではロルフィングの10回セッションのそれぞれの手順(レシピ)が与えられ、それに沿って行うことができたので、迷った場合には原点に戻れる何かがあった。

一方で、Rolf Movementの場合には、クライアントとどのような関係性を築くのか?Rolferとしてどのような身体の状態で臨むのか?どのような身体観察の方法をとるのか?などのガイドは与えられるが、具体的にどのように3回セッションを組み立てるのか?具体的に教えてくれるわけではない(詳細は「直感と身体観察を通じて見えてくるものは・・・」参照)。
そのため自ずとトレーニングの方法も異なってくる。

つまり、リスクを冒して、違う方法を取り入れることが求められる(テーブル(ベッド)で行うワークを少なくして、立位でセッションを行う等)。

そのため、Instructorは環境を整備することに力点を起き(場をホールドするという意味)、
「こうしなければならない」
といったことが一切ない。

そして、もし間違ったことをしていた場合にのみ軌道修正が行われる。5日目の最後に一人一人のコメントがRitaから求められた際にも
「いい意味で混乱している」
と何人かいってたが、Rolf Movementには自由度がある分、どのようにセッションが終焉してくのか?見えなく不安になっていくことがある。ただ、最終的にセッションとして成り立っていくことができるので、身体の変化のプロセスをより信じることが求められる。

さて、ヨーロッパのRolf Movementの特徴を一言でいってしまったら何か?といえば、度々本コラムでも書いたようにフランス人のHubert Godard(以下Godard)の考え(Tonic Functionと呼ばれる)が大きく影響を受けている点だろう。

1990年代は、単に身体の意識と動きとの関係で行われていたMovementのトレーニングも、2000年に入り、Tonic Functionが取り入れられることによって、理論的支柱が入り、トレーニングの内容も深まっていったと思う。

今回、AssistantのAline Newton先生が2日目にTonic Functionについて、時間をかけて説明してくれた。身体の構造(Structure)というのは、姿勢を安定化(stability)するために「Tonus=筋肉の力」が必要だが、Tonusは、様々な因子によって、その安定性が影響を受ける。

どこに重さを預けるのか?その結果として、自由に身体を動かすことができるようになるという2方向性(Palantonicity)がRolfingの基本的な考えがある(「5原則」参照)。そして、Tonicというのは持続的という意味だ。日本語に直訳すると持続的に働くということ。Godardは、重力に対して持続的に働く筋肉の機能に注目したのだ。そこで、筋肉には一時的に働くPhasicと持続的に働くTonicに分けた(「身体と心(2)〜Tonic Function(1)」参照)

如何にしてもTonicの部分を引き出すのか?2方向性を発揮していく上で重要となる。

sky hook

Phasic/tonicに影響を与えるのは、下記の五つの視点から見るとわかりやすい。

一つ目は組織(Tissue)。ロルフィングで行う筋膜へのアプローチを通じて、構造やTonusに影響を及ぼす。
二つ目は知覚・認知(Perceptual)だ。人間が成長していく上で身につけるもの。身体に習慣という形で取り込まれるが、主に環境の脅威から自分を守るため、取り入れられる。
三つ目は、思考(Thinking)や言語(Words)。ここには、どのような母国語(Language)を選択しているのか?やボディ・ランゲージ(Gesture)も含まる。一つの経験が言語化=概念として身体内に定着していく。例えば、「背筋を伸ばす」、という一つの言葉を取っても、背骨を伸ばすのか?背骨に力を入れるのか?背骨が勝手に伸びるのか?など、人によって異なる経験で言葉という形で記憶させる。
四つ目は、意味(Meaning)、意義(Significance)、又はシンボル(Symbolic)も含まれる。顔を少し後ろに向けたり、胸を閉じる仕草をするというのは、その人にとって、安全に感じる、意味を感じさせるから行う。
五つ目は、共同で動く(Coordination)。Nikokai Bernsteinの一つの研究成果としてMotor Coordinationという仮説を提唱。適した筋肉が効率よく働くことで構造が維持されるということが科学的に見つかった。
この五つの視点で身体を観察することによって、どこにアプローチしていったらいいのかが、明確になっていく。ワークも五つの視点を使って練習することが多く、この切り口の奥深さを感じることができる。
次にクラスの雰囲気とクライアントとの関係性作りについて学んだことを紹介したい。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka