【R#260】脳・呼吸と横隔膜との深い関係〜呼吸に意識を向けることで、心に大きな影響を及ぼす

はじめに

みなさん、こんにちは!
東京・渋谷でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。

呼吸と横隔膜

私が1回目のセッションを始めるときに
「呼吸するときに、吸う方と吐く方とどちらが、やりずらいですか?」
を聞き、肩、胸の前後、脇の左右を意識させる。

この質問って
「呼吸の筋肉をどれだけ使っているのか?」
ことでもある。

実は、呼吸において「横隔膜」と肋骨と肋骨の間にある「肋間筋」が動くことで、呼吸が深まる(他の筋肉があるがここでは、この2つに絞る)。ロルフィングの1回目は、主に「横隔膜」の動きを感じることのできるセッションになっている。

「横隔膜」を整えると、呼吸がより感じられやすくなるが、それだけではない!
1)横隔膜は心拍数へ影響を及ぼすことができる
2)脳の指令で「横隔膜」を動かすが、その指令に影響を与えることができる
3)呼吸法(ボックスブリージング)によって脳から「横隔膜」への指令が大幅に改善できる

以下、横隔膜の動きが改善することによるメリットについてまとめたい。

息をする、吐くを意識する〜呼吸の意識で、心拍数を変えることができる

横隔膜は、肋骨の下にあるドームのような筋肉で、胴体を肺・心臓のある「胸部」と腸・肝臓など他の臓器のある「腹部」に分けている。要は、息を吸うと、肺に空気が入り、その圧力で横隔膜が下がる。逆に息を吐くと、肺から空気が出て、横隔膜が上がる仕組みになっている。

Breathing - before

Breathing - after

呼吸は「心」に大きな影響を与えることができる。

「集中したい場合は、吸う方を長く、リラックスしたければ、吐く方を長くする」

なぜならば、

息を吸うと、心拍数が増え(自律神経の交感神経が活性化)、息を吐くと、心拍数が減る(同神経の副交感神経が活性化)する

からだ。

このように、呼吸の動き(横隔膜の動き)は、心拍数=心に大きな影響を与える。

原理的にはこうだ。

息を吸うと、横隔膜が下がる。実は、横隔膜は、心臓と筋膜で繋がっている。このため、横隔膜が動けば、心臓も動く。横隔膜が下がることで、心臓が下に引っ張られ、心臓が少し広がる。心臓内には血液が流れているが、引っ張られてることで、流れが遅くなる。心臓のペースメーカーの働きをする「洞房結節」から脳へ。

「血液の流れが遅くなったよ!」

という情報を脳に送る。脳は、その情報を元に

「血液の流れを早くせよ!」

つまり、心拍数を増やすようにという指令を心臓へ送り、心拍数を増やす。要は、息を吸うことで、心拍数が上がるのだ。

逆に、息を吐くと、横隔膜が上がり、心臓が少し狭まる。

「血液の流れが早くなったよ!」

という情報を脳に送る。脳は、その情報を元に

「脳の流れを遅くせよ!」

つまり、心拍数を減らすようにという指令を心臓に送り、心拍数を減らす。要は、息を吐くことで、心拍数が下がるのだ。

人間は、呼吸をしているため、必然的に「心拍」が変動する。脈が遅くなったり、早くなったりする。心拍の変動を調べる指標の一つにHRV(Heart Rate Variability、心拍変動)が知られている。HRVは「自律神経の状態」を調べることができ、アスリートの世界では注目されている。

HRVが高い場合は、副交感神経優位、HRVが低い場合は、交感神経優位になると考えるとわかりやすい。スマホでアプリも発売されているので、もしご興味がありましたらチェックください!

脳からの指令で「横隔膜」が動く〜どの神経系を使っているのか?

人間の意思で動かすことのできる筋肉(随意筋)は、骨格筋で、脳からの指令によって動かすことができる。一方で、心臓などの内臓は平滑筋と呼ばれ、これらは自律神経によって支配。人間の意思で動かすことができない(不随意筋)。参考に、横隔膜も脳からの指令によって動く。

呼吸をするときに、脳の中でも「脳幹」という部分が関わっている。実は「脳幹」の中で、呼吸に関わる部位が明らかになったのは、2003年以降のことだ。もし、英語が理解できるならば、ぜひ下記の動画をチェックすることをお勧めしたい。

カルフォルニア州立大学ロサンゼルス校のJack Feldman教授らの研究によって
1)Pre-Bötzinger complex(PreBotC)(頭の後ろの首周辺、脳幹の「延髄腹外側部」の網様体にある)
2)Parafacial nucleus(傍顔面神経核、PFN)(脳幹の「延髄腹外側」の後台形核にある)
の2つの脳の神経部位が呼吸に関わっていることがわかった。

PreBotCは「呼吸のリズム」、つまり、息を吸って、吐いて、というリズムを整える神経である。就寝している時、呼吸に意識を向けていない時などに働く。米国で話題になったオピオイド中毒(痛み止めで処方される、中毒になり、死者が出ていることで米国で話題になっている)、例えば、フェンタニルやオキシコドンなどは、PreBotCのオピオイド受容体に結合。オピオイドの過剰投与により、呼吸を停止を招いてしまう。

PFNは「呼吸のリズム」以外の呼吸に関わっている。例えば、2回息を吸って、2回息を吐く、もしくは息を止める時等。つまり、意識的に呼吸を行うときにPFNが動き出す。それ以外にも、声を出す、笑う、運動するとき、レム睡眠の時等も。PFNは、顔面神経の近くに位置しているため、顔面神経と共同で働き、顎をリラックスさせ、舌を緩める効果や、発声しやすくなる

呼吸法・ボックスブリージング〜リラックス効果

この考え方がわかると「ボックスブリージング(box breathing)」の呼吸法の意味が理解できると思う。
ボックスブリージングには以下の、4つのステップからなる。
1)ゆっくりと息を吸う(4秒)
2)息を止める(4秒)
3)ゆっくり息を吐く(4秒)
4)息を止める(4秒)
これを2〜3分繰り返す。

呼吸の時間を何秒にするか、については、判断する方法がある。息を目一杯吸って、息をゆっくりと吐き、その時間を測定することだ(二酸化炭素を排出できる量)。

20秒よりも少なかった場合は(二酸化炭素の耐性が低い)、3
25秒〜45秒の場合は(二酸化炭素の耐性が中ぐらい)、5〜6
50秒よりも長かった場合は(二酸化炭素の耐性が高い)、 8〜10

この数字がボックスブリージングの秒数となる。

血中に二酸化炭素が不足すると、せっかく息を吸うことで取り入れた酸素を体内が利用することができなくなる(細胞に酸素が取り入れられなくなる)。二酸化炭素の耐性が弱いと、酸素が体内で利用去れにくくなっている可能性が高い。

この呼吸法は、息を止めるのでPFNへ刺激を与える。そのことで、リラックスする、冷静さ、ストレスに対処しやすくなる、睡眠が深まるという効果などがある。しかも、この呼吸法により、普段の呼吸にも大きな影響を与えることが可能だ。実際、脳への指令によって横隔膜が動くが、ボックスブリージングを行うと、脳の中の神経のつながりに変化が起き、より指令が伝わりやすくなると言われている。

まとめ

今回は、横隔膜について、心拍数、呼吸、脳ととの関係についてまとめさせていただいた。
少しでも、この投稿が役立つことを願っています。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka