2015年6月24日、25日の両日、金沢の歯科医院で世界一周及びロルフィングの講演を行うことができた。金沢の講演の経緯や観光の模様については、旅コラムで触れた(【旅コラムVol.170】参照)。
その際、金沢にはロルフィングの施術を行うロルファーがいないことを含め、日本のロルフィングの現状について少し触れた。
今回は、実際にロルフィングについて話した内容について書きたい(世界一周については割愛する)。
なぜ現代の西洋医学が主流になったのか?代替療法はどのような歴史をたどってきたのか?といったことを説明。その実例として、ホメオパシー、スリランカのアーユルヴェーダの訪問記(【旅コラムVol.166】参照)やドイツの代替療法の現状( ハイルプラクティカー (Heilpraktiker;英語でいうHealing Practitioner)という資格があること)等(【旅コラムVol.4】参照)について触れた。
ロルフィングは、アメリカ人の生化学者、Ida Rolfによって開発されたこと。全10回のセッションから構成され、最終的に本人の自立を促すことが、カイロや整体と違うところを説明。カラダの構造(姿勢、体形)や働き(歩き)に注目することで、身体のバランスを整えていく。治療が目的ではなく、不快な症状(腰痛、肩こり)はその施術の結果として軽減すると考えられること等を紹介した。
実際にフィギュアスケート選手、アメリカンフットボール(NFL)やバスケットボール(NBA)、俳優や音楽家にも取り入れられているロルフィング。
説明に力点を特に置いたのが、10回シリーズの説明だった。
身体の外側を施術する3回からなる表層筋シリーズ。1回目は、上半身の呼吸に関わる筋肉の筋肉を緩める。2回目は、呼吸を整えた後、土台となる下半身を足裏から初めて下肢を中心に筋肉を緩める。3回目は、肩・腕・手を含めた体側を調え、身体の前後のバランスを整える。
表層シリーズが終えると、4回〜7回の深層(コア、インナーマッスル)への準備が調ったことになる。その特徴は、深層の部分を扱うところにある。深層の部分は、奥にあるので鍛えることが難しい。そのため、深層筋に「意識」を向けることで活性化させる(【RolfingコラムVol.21】参照)。
上半身は、頭、首、背骨、仙骨、骨盤まで中心軸が通っている。しかし、下半身になると突然消える。その代わりに身体が考えたのが、内転筋と骨盤底を発達させること。能楽師であり、ロルファーの安田登氏の著者「ゆるめてリセットするロルフィング教室」では、それをバーチャルな中心軸と表現した。
セッション4、5、6は、中心軸を整えることを目的に、骨盤の上(大腰筋、仙骨や背骨)、下 (骨盤底や内転筋)を通じて(4は内転筋〜骨盤底付近、5は大腰筋や横隔膜、6は、背骨と仙骨)の施術を行っていく(【RolfingコラムVol.32】参照)。
そして、最後のセッション7では頭・顔の部分の施術を行うことになる。
中央軸というのは、頭の頂上まであるので、ある意味セッション7は中央軸の意識を取り戻す最終セッションでもある。
深層のシリーズに入っていくと、ちょっとした深層の変化によってその人の知られたくないことや、押さえつけられた感情が湧き出てくることがある(【RolfingコラムVol.35】参照)。
ロルフィングの施術は各回2〜3週間置くことになる。なぜ、期間をこのように置くかというと、
「身体の変化に頭脳がついてくるのに時間がかかる」
ためだ。その結果として整体・マッサージとは違い、効果が持続し自立が促される。
今回お世話になった中山大蔵さんによると、歯科医でも歯の噛み合わせを身につける場合にも、頭が身体の変化に適応するために時間がかかるらしい。
考えてみれば、ロルフィングも口や鼻の中を施術し、歯科でも重要視する顎の筋肉を緩めることを試みる。なぜならば、全身の力を抜くのにここの部位が肝要であることがわかっているからだ。そして、実際に歯科とマッサージとのコラボもあるとのこと。歯を全身という視点から見るというアプローチ。そういえば、トレーニングのPhase IIのGiovanni先生も歯科医から患者の紹介もあることを聞いた。
今まで、理学療法士や医師とどういった接点があるのか?について考えてきたが、意外と歯科医の接点の方が近いように思えて、今回の公演の反応を聞いていて面白かった。
最後に、ロルフィングは、手・肘・腕をつかって筋肉を包む筋膜にゆっくりとした圧力を加えながら、10回のセッションを通じて、全身に触れ、緊張を解いていくということもあり15分程度のデモを行った。
少し施術を行っただけで、ある程度の効果を実感していただけたのは驚きだった。
このようにして無事3回の講演会を終えた。また、金沢へ行く機会はあると思う。それまでにもう少し腕を上げ、経験を積みたいと思っている。
では、次回は代替療法の歴史について取り上げたい。