ロルフィングのセッション8以降の説明に移る前に、再び「力を抜くこと(ここでは、余計な力を抜くという意味)」について取り上げたい。私自身、ヨガでは「力を抜くこと」が課題で、様々な西洋のボディワークを探究するきっかけとなった(【YogaコラムVol.9】「力を抜くこと」〜アレキサンダーテクニックとヨガ」、「【RolfingコラムVol.11】力を抜くこと(1)」参照)。
ロルフィングは、
身体内にスペース(空間、articulation)があることに意識を向ける(英語でevoke)ことで、余計な筋肉の力が抜けていく
と考える(「【RolfingコラムVol.16】力を抜くこと(2)」参照)。今回は、どのようにスペースの意識を広げるかについて考えてみたい。
ロルフィングでは重力をどのように感じるかを大切にする。大きな理由は身体はどのような状況でも重さを感じることができるからである。
身体が重力に対して自由に動くためには、身体を一つの大きな塊と考えると、上半身と下半身を感じる必要がある。上半身と下半身が分かれるという意識。その意味は、それぞれ相応のスペースがあるということ。下半身の土台を元に上半身が自由に動くように調えていく(詳しくは、「【RolfingコラムVol.19】2方向性(Palantonicity)」参照)。
身体というのは、前・後、左・右というスペースも持つこともできる。
このため、身体には、上・下、前・後、左・右の6つのスペースがあるということになる。ロルフィングでは、セッション1〜3を通じて上・下、前・後の意識を、セッション4〜7で左・右(中央軸の意識)を筋膜に働きかけることによってその意識を広げていく。
このことで、身体内から変化が起きる。緊張や日々のストレスによって表層優位になってた身体が、余計な緊張が抜けスペースを与えられることで、深層が働き出す。最終的に、重力によって深層に対して適切な刺激を与えることになるので、経験的により適した場所に身体が収まる(詳細は「【RolfingコラムVol.21】深層(コア)セッション」参照)。
調えていくための指標として、身体にどのような重さがどこにかかっているのか?gとg’(gは、gravityの重力)という二つの指標を使う。g、g’とは
- g:重さが身体全体に対して、前面か後面か?
- g’:股関節から見て重さが上半身に対して、前面か後面か?
という意味を持つ。gもg’も極端に前や後に傾くことで、余計な力が入り、6つのスペースの中でどれかのスペースの意識が狭まるという状態になるからだ。例えば、g’が前面に傾くと、背骨側の筋肉が伸び、胸及び腹周りの筋肉が縮まることが起こる。
セッション1〜7はこのg、g’を指標に6つのスペースをどのように広げ、自由にしていくか?がポイントとなる。重力に対してスペースを広げる意識を持つことで、自ずと力が抜けていくのだ。
その過程で、重さに対してスペースを広げようとしている流れに対して、それを防ぐような力が働いていることに遭遇する。
そこで、
- 何がそれを防いでいるのか?
- 課題として、なぜそれに執着しているのか?
- 手放すとどうなるのか?どういったベネフィットがあるのか?どういった可能性があるのか?
についてクライアントと考えていく。
興味深いのは、その後のセッション8〜10だ。今まで6つのスペースがあったものをそれぞれ連動性をもって動けるように身体を調えていくからだ。例えば、上・下、前・後、左・右はどのようにお互いが関連性(relationship又はlink)をもって動けるか?ということになる。関連性をセッション8〜9で調えて、セッション10では、自分の内部と外部環境との間にスペースの広がりを考えていく。
実際に、ロルフィングを体感していただくしかないが、トレーニングでセッション9が終わった段階で、そうとうスペースの意識が相当広がったと思う。ロルフィングの施術をするようになったら、こういった意識は忘れずにアプローチしていきたい。