ロルフィングのセッションの後半(特に8回と9回)になると身体部位に施術するという手法からという、クライアントご自身が、能動的に身体を動かすことで身体部位へアプローチするというムーブメントについて練習、セッションへ取り入れる機会が多くなっている。
以前本コラムにおいてロルフィングは無意識になっている身体地図(ボディスキーマ)を書き換えることにあると述べた(【RolfingコラムVol.76】参照)。そしてムーブメントを取り入れると、動きを通じて身体地図に働きかけることができるようになり、クライアントの選択肢の幅が広がるのだ。
実は、ロルフィングには認定ロルファーとロルフ・ムーブメントという2つの資格があるがあり、ムーブメントは独立してトレーニングを行う。認定ロルファーであり、ロルフ・ムーブメントの資格をもつ鎌田孝美さんが最新のブログ記事「ロルフムーブメントと身体地図」でわかりやすくロルフィングにおけるムーブメントの意義について興味深く紹介している。
ロルフィング、とくにロルフムーブメントは、身体の無意識を意識化する作業です。無意識に働いているsensory motor neurons(注:自分の身体を自分のものとして感じることができるセンサーのこと;感覚ー運動神経)を意識化して、無意識の反応を意識化する。
これがなぜ重要かというと、できない動きができるようになるからです。ロルフムーブメントではイメージを多用します。イメージングにより、未開だった、あるいは事故などにより断絶した感覚ー運動神経を蘇らせるということが可能になるからです。たとえば脳卒中や事故の後遺症に対するリハビリに使えるし、あるい は今の動きをさらに洗練されたさらなる高みに持って行きたいプロの運動家などに応用出来ます。
となる。「できない動きができるようになる」というところがミソだ。本日(2015年3月13日)のトレーニングではクライアント・セッションがなくOPENの日であったために練習会と質疑応答(Q&A)が行われた。
私はムーブメントをセッションに取り入れる意義というのはわかったが、ムーブメントをいざPhase IIIのセッションに取り入れてクライアントと一緒に進めると、「何をやっていいのか?わからなくなってしまい」クライアントとのコンタクトを失ってしまうことが多い。そこで、自分を見失うことなく、ムーブメントをセッション中に取り入れるためにどうしたらいいのか?について、Q&Aのところで聞いてみた。
Jörg先生によると、
身体内にスペース(空間)を作り、2つの方向性をもつようにすること(create space and orientation)
がムーブメントにおいて大切。
細かいところは本コラムを参照していただくことにして、大まかに述べると、身体のスペースについては、身体内にスペース(空間)があることに意識を向ける(英語でevoke)ことで、余計な筋肉の力が抜けていくというロルフィングの考えからきている(【RolfingコラムVol.16】参照)。また、ロルフィングでは、Phasic Muscle(一時的に働き、疲労しやすい筋肉)よりもTonic Muscle(持続的に働く筋肉、エネルギー効率の高い筋肉)を活性化する方向に施術が組み立てられているが、Tonic Muscleは身体に2つの方向性をもたせることで働くようになる(【RolfingコラムVol.43】参照)。
そしてロルフィングの5原則からクライアントのニーズについて考える(5原則については【RolfingコラムVol.68】参照)。例えば、クライアントはSupport(サポート)が必要なのか?それともAdaptability(適応性)が必要なのか?等。例えば、下半身が上半身のSupportに必要な場合に、どの体勢からムーブメント・セッションをクライアントと一緒に実践するのか?そして、クライアントが無理のない範囲でどこまでムーブメントができるのか?について考える。
時に、クライアントとのコンタクトができいこともあるが、その場合には
- ペースを落とす(Slow down)
- ムーブメントの可動範囲を少なくしていく(Decrease the range of motion)
ことを考慮する。尚、クライアントの使ったことのなかった動きを意識化することに対して、動きに可動範囲が少なくてもいいし、特にこういったムーブメントがあるのだという決まりがあるわけではない。
これは一つのフレームワークと言えるが、こういったフレームワークを各セッションでJörg先生は紹介してくれるので、本当にありがたいと思う。
ムーブメントはクライアントの選択肢を広げるために今後是非とも取り入れたい手法だ。そして、トレーニング中でも現在、最も時間を割いている手法だ。今までの長時間にわたるトレーニングの模様(ビデオで録画)を撮ってきたが、今後、それらを復習し、自分なりのムーブメントを取り入れたセッションができるようになればと思っている。