ここ数日、人の話を聞くことに比重を置いたロルフィング・セッションを数回経験した。せっかくの機会、私が他人の話を聞くときに心がけていることを書いてみたい。
人の話を聞く際に大切に思っているのは、
- 行動(DOING)よりも価値観(BEING)に目を向けること
- 多様なものの見方があることを伝えること
- 考えるための「時間」=「間」=「スペース」を大事にすること
- 言葉の使い方に注目すること
第一に、DOINGよりも BEINGに目を向けること。2009年、The Coaches Teaching Institute(CTI)主催のコ・アクティブ・コーチングで学んだことだが、
人が話す際、
DOING=何をするか?
BEING=自分がどうあるべきか?
の二つの側面から理解すると、話が整理しやすいということ。そして、BEINGという目に見えない、無意識の領域といってもいい、価値観に働きかけることによって、意識にあがっていくるDOING が自然に変化していく。
BEINGに目を向けるというのは、自分と向き合い形になるので、最も大切な
「答えは自分の中」にあって、「答えが他人(本も含む)の中にあるのではない」
ということを伝えやすい。
というのも、この考え方を忘れて相談を受けると、どうしても自分の考えが相手の悩みに反映。自分と相手というのは違う人間だということを忘れ、自分のストーリーを語り出し、自分のエゴが出てしまうからだ。
第二に、考え方の多様性について。ロルフィング・トレーニングのPhase IIのGiovanni先生から学んだことだが、彼は聞くこと・確認することを通じて、相手の考え方を把握し、新たな見方を提示するということを心がけていた。
例えば、
「○◯のような見方をしているんだね。それも素晴らしいが、△△の見方をしてみたらどうか?」
なぜ、このような伝え方が有効か?
米国の心理学者のウィリアム・ジェームズの
「人間の持つ感情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望するという気持ちです」
言葉が示すように、人は、自分自身のことを価値のある存在だと思っていたいのと同時に他人からも自分のことを価値のある存在だと思っている。これは、心理学的には、「自己重要感」という言葉で語ることができる。相手の考え方を尊重した上で、選択肢を新たに用意するというのは、自己重要感を満たした上での、別の考え方の提示なので、受け入れるかどうかは別として、話を聞いてくれる可能性は高い。
また、相手はそう簡単に変わらないことの理解も大事だ。というのも、相手が今まで身についている見方というのはその人自身が気づいていない、その行動を促すような肯定的な理由があって行っている可能性があるからだ。
第三に、スペース=間について。一方的にこちらの考え方や話を伝えてしまうと、相手に自分で見つめ直す時間を奪ってしまう可能性がある。
100%全てを伝えるのは無理。70%を伝えた上で、30%は相手に考える時間を与えることを心がけると、相手は自分の言葉で語れるようになる。そして、感情を吐き出すこと(例、涙)ことで、より相手は自分をリセットすることことも可能。その結果として相手が新しい考え方に対してOPENになりやすい。
第四に、言葉の意味。言葉というのは、人が育った時期・世代、家庭環境、学校教育によって使われ方が違ってくる。言葉の意味どのように使っているのか?は、自分と他人の考え方の違いを理解するために必須。「愛」「努力」「頑張る」「腑に落ちる」といった言葉は一見みんな同じように使うように見えて、実は人によっては肯定的に、もしくは否定的に使うことがある。
また言葉は五感の使い方によっても変わっていく。本コラムでも度々触れているが(【Rolfingコラム Vol.79】参照)、視覚(visual、V)、聴覚(auditory、A)、体感覚(kinetic、K)のうち、どれが優位なのか?は使われる言葉がヒントなる。
相手の心地いい五感からの言語体系を使うことで、相手に安心感を与えることにつながっていく。
ロルフィングを通じて身体からのアプローチを行っているが、それにも増して大切なのは人の話を聞くこと。様々なヒントも得られやすいし、気づきも多い。そして、相手の話を聞くと学ぶことが多い。これからも「話を聞くこと」も大事にしていきたい。