【R#293】なぜ動く前の動作が大事か?〜姿勢を整える上で

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

私は、2015年6月から、ロルフィングのセッションを提供している。「筋膜」へアプローチすることで、身体の姿勢が整えていく。ロルフィングで見る姿勢は「歩く」「立つ」「座る」の3つだ。

興味深いのは「歩く」「立つ」「座る」直前に、人間は必ず、特徴的な筋肉の使い方をする。ロルフィングでは、このことを「動く前の動作」=「Pre-movement」と呼ぶ。なぜ、「Pre-movement」が、姿勢を整えていく上で重要となるのか、今回はこの点に関して情報をシェアしたい。

動く前の動作=Pre-movementとは何か?

Pre-movementについての重要性を学んだのは、ロルフ・ムーブメントのトレーニングに参加した際、インストラクターの一人、Aline Newton先生との出会いが大きい(トレーニングの模様については「Pre-movement、ヨガ、アレクサンダーテクニック」に書いた)。

そこでは、Pre-movementを「動作を行う前に身体を安定化(stabilize)させるために、どこの部分に力が入っているのか?」「動作が行われる前(Pre)」の「動作(Movement)」と定義している。

そして「座る」から「立つ」、もしくは「立つ」から「座る」姿勢に、それぞれ移った際に、変化しやすいので、観察しやすい。

例を挙げたい。

人間が四つん這い、もしくは「座る」の姿勢にいたとする。「座る」姿勢の時に、お尻の二つの骨(坐骨)は簡単に意識できると思うが、骨盤には、他にも恥骨、尾骨もある。実は、座ってる際に、坐骨、恥骨、尾骨が独立して動いていることが重要なのだが、デスクワークが多い、運動不足だと3つを区別するのが難しくなる。結果、腰痛、肩こりが起きるのだ。

ロルフィングでは6回目のセッションで、3つをどう独立して動かすか?その課題に取り組む。面白いのは、坐骨、恥骨、尾骨をそれぞれ違った動きをすると意識すると「座る」っている段階で、骨盤底に呼吸が入りやすくなり、肩の可動域が広がり、腰痛が軽減していくのだ。

実際、ロルフィングのセッションで、肩や胸の力が抜けない人が、最後に、骨盤底の力を抜くようなエクササイズを行うと、背骨が延び、不思議と力が抜けていくのだ。

更に、3つの骨の動きが明確に見れるのは「座る」から「立つ」姿勢に移る際だ。「立つ」直前に、お尻(骨盤)のどこに力が入っているのか?どこに筋肉に力が入っているのか?。見極めることができるのだ。

実は、Pre-movementは、重力との関係性が深いと言われ、重力下で働く筋肉によって影響を受けることが知られている。以下、その点についてまとめたい。

Pre-movementは、重力(特にTonic Muscle)との関係が深い

ロルフィングでは、重力に置かれた時に、身体は2種類の筋肉が働くと考える。ロルファー・ダンサーのHubert Godard氏は、Tonic Functionという仮説を唱え、重力の下で、一時的(Phasic)に働く筋肉(以下Phasic Muscle)と持続的(Tonic)に働く筋肉(Tonic Muscle)の2つが働くと考えた。

Phasic Muscleすぐに働く筋肉なのに対して、Tonic Muscleは持続的に働き、意識していないと感覚がつかめない。前者は、すぐに疲れるの対し、後者は、疲れにくい。このため、身体を整える際に、持続的に働く筋肉の意識を如何にして高めるか?が重要になる。

以前、ロルフ・ムーブメントのGael Rosewood先生が日本でワークショップを開催した際、Tonic Muscleが働くのに5秒ほどかかり、弛緩するのにも5秒ほどかかることを知ることができた。

興味深いことに、Tonic Muscleは一度スイッチが入ると、働き続け疲れることを知らない。しかしながら、なんらかの事故や障害、トラウマの影響によりスイッチがオフになる。そして、Tonic Muscleは、Pre-movementの担当の筋肉でもあるのだ。

Tonic Muscleの筋肉とは?

では、Tonic Muscleとは、どういった筋肉なのか?
具体例を挙げると、
1)腕全体をあげる場合には、そのままだとバランスが崩れ身体が前傾してしまうので、動く前にヒラメ筋(Soleus Muscle)が働くこと。
2)ものを掴むため、手(この場合の手は手のひらと手指)を使う前から、前鋸筋が働くこと。
3)首や顔の安定性を保つために、舌が口蓋(歯の上の部分)に静置。その結果として、身体のバランスを保つことができる。
等だ。

Tonic Muscleのエクササイズ

持続的に働く筋肉の方は、パートナーとのワークで、感覚を掴むことができる。

呼吸でゆっくりと吐きながら(吐くことで力を抜くことを促す、ハミングの音を出してもOK)、
1)恥骨と尾骨を寄せる
2)坐骨結節同士を寄せる
3)左右の上前腸骨棘(ASIS)を寄せる
4)背中の腸骨同士を寄せる
5)尾骨を上げる
を意識するワークだ。

ぜひとも試していただきたい。

まとめ

今回は、ロルフィングで見る姿勢は「歩く」「立つ」「座る」の3つについて、動く前の動作=Pre-movementについて、どのように見るのか?重力との関係などを中心にまとめさせていただいた。

少しでも、この投稿が役立つ子をと願っています!

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka