Phase IIIは、今まで学んできたことを復習するいい機会になっている。ロルフィングの一番最初に学ぶロルフィングの5原則もその一つだ。本コラムではまだ説明していなかったので、この5原則について取り上げたい。
ロルフィングには5つの原則があると考える。Wholism(全体)、 Support(サポート)、Adaptability(適応性)、Palantonicity(2方向性)、そしてClosure(クロージング)である。
1つ目は、Wholism(全体)。身体をサイエンスのように部分の和が全体という見方も大切にしつつ、全体を全体のままみるということが求められるということ。いわば分析的な見方と知覚的な見方を調和するということである(分析と知覚的な見方の違いについては【RolfingコラムVol.58】、【RolfingコラムVol.60】参照)。例えば、肩こりがあったととしても、肩のみにフォーカスするのではなく、他の身体の部分とどう関係があるのか?結果的に、別の方法でそれを補うような身体の使い方(肩の筋肉の力を利用すること)を考えるようになるように考える(英語では、Compensationと呼ぶ)。
2つ目は、Support(サポート)。身体がしっかりと調うためには、土台(下半身の足)からのサポートが重要となる。また、クライアントとの関係構築やクライアントに身体感覚に目を向けさせるためのサポートも含まれている。
3つ目は、Adaptability(適応性)。日々変化していく環境に対してどのように適応するのか?そのために情報を外部から収集する必要がある。姿勢を見る際に、視覚(Visual system)、内耳感覚(Vestibular system)、筋感覚(kinesthetic system)が重要であることを本コラムでとりあげ、その中で筋感覚を調える大切さを述べた(【RolfingコラムVol.31】参照)。足や手が新しい情報を入手しやすい状態でいると外部の新しい環境に対して適応しやすくなる。
4つ目は、Palantonicity(2方向性)。「前後を伸ばす」というギリシア語のpalantonosから由来し、身体が2つの方向性を持つことの大切さを説いている(Palantonicityについては【RolfingコラムVol.19】参照)。例えば、下半身は重力を感じる(下向き)、上半身はそれを土台に背筋が伸び、自由に動く(上向き)等。また、この考えはHubert Godard氏のTonic Functionにもつながっている(【RolfingコラムVol.42】、【RolfingコラムVol.43】参照)。γ運動神経系を活性化して、身体内のエネルギーの効率の高いTonic muscleを最大限生かすためには、Tonic muscleに2つの方向性を与える必要があるという考えだ。
5つ目は、Closure(クロージング)。ロルフィングの特徴として、最終的にクライアントの自立を促すこと。本コラムで以前触れたように、マッサージや整体とは違いロルフィングは、10回で終了する(【RolfingコラムVol.33】参照)。それは、10回のセッションを通じて学んだことを自分の生活に取り入れていくということでもあり、クライアントの自立性を促すことである。
このようにロルフィングには5つの原則があり、10回シリーズはこの原則のどこかに当てはまる。Phase IIIのトレーニングでは10回シリーズで見失ったときや基礎に戻る際にこの原則をよく見直している。5つと原則は単純だが、学ぶことが多い。