【R#119】終わりがあること

私がロルフィングに初めて体験した時にびっくりしたのが、ロルフィングには終わりがあるということ(初回の自分の体験談については、【RolfingコラムVol.2】参照)。本コラムで以前触れたように、マッサージや整体とは違いロルフィングは、10回で終了する(【RolfingコラムVol.33】参照)。10回のセッションを通じて学んだことを自分の生活に取り入れていくということでもあり、クライアントの自立性を促すことを施術する側が考えることである。ここに、自分がこの手法が気に入る一つの大きなポイントがあると思っている。
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Ida Rolfが家庭の事情で在籍したロックフェラー大学を20年代に退職。ロルフィングと呼ばれるボディワークを1940年頃に開始。1950年代にはカイロやオステオパシーの施術者向けに短期に教え始めた(歴史については、【RolfingコラムVol.106】参照)。当初、セッション・ルームに訪れるクライアントに対して、Ida Rolfは、個人個人のニーズに合わせて、それぞれ個別のオーダーメイドの施術が行っていた。Youtubeで、彼女の施術を見ることができるが、相当痛かったらしい。ただ、不思議と治ってしまうため、彼女のセッションは非常に人気を博すことになる。
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やがて、テクニックを重視するオステオパシーやカイロプラクティックの考えに賛同できず、テクニックよりも哲学を重視する考えを広めるために(哲学については、5原則を以前本コラムで触れた。【RolfingコラムVol.68】参照)、あるフレームワークを考案。
「施術者と教師の養成を開始する際、全ての身体に適用できるような方法がないか?」
ということで10回セッションと形となり整えていく。このようにしてEsalen研究所やロルフィングの本部が置かれることになるボルダーで教えられていく(Esalenについては【RolfingコラムVol.94】【RolfingコラムVol.95】参照)。
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ロルフィングのトレーニングでは、Ida Rolfがどのようにして10回セッションを組み立てて行ったのか?についてミュンヘンで開催されたトレーニングのPhase IIの際、InstructorであったGiovanni Felicioni先生から説明があった。
歴史的には、セッション2〜7の6回のセッションが組み立てられ、セッション2の足を調える前に呼吸を調えるセッションを入れる必要性を感じ、セッション1加えた。そこで7回シリーズが完成する。
7回シリーズについて簡単に説明したい。
ロルフィングの最初のセッション1〜3は、表層(sleeve)の身体部分を調える(【RolfingコラムVol.10】参照)。表層から開始するのは、タマネギの皮を一枚ずつはがすように外側から身体へのアプローチをとるためである。Giovanni先生の表現を借りると、身体の表層の部分で動きを邪魔しているピンを一つ一つ取っていく(take the pins out)といってもいい。
ピンが取れた段階で、セッション4〜7は身体のより内面の部分、深層(core)に入っていく(【 RolfingコラムVol.21】参照)。深層の部分は、奥にあるので鍛えることが難しい。そのため、深層筋に「意識」を向けることで活性化させる。そのため施術は、表層とは違ったアプローチが求められる。手を聴診器にたとえるとわかりやすいかもしれない。手で深層を探っていき、問題の箇所を特定。そこに手から刺激を与えて深層からの反応を待つ。大切なのは、内側から変化が起きるということ。ロルフィングでは、深層に対して、適切な刺激を与えると、経験的により適した場所に収まると考える。そして、深層のスペースに変化が起きると、無意識が意識化されるので、より効果が実感が体感ができるのだ。
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Ida Rolfは、7回までのセッションをさらに身体全体からみて統合する必要性を感じ、セッション8〜10の統合セッションが加えた。統合セッションでは、肩帯(Shoulder girdle、肩甲骨、鎖骨、胸骨付近のこと)と骨盤帯(Pelvic girdle、 恥骨、坐骨、腸骨、骨盤底付近 )というより大きな塊で身体を見て、どのように連動させていくのか?を考える。どちらかというと、深層から身体を見たのをより広い視野でみるようなもの。最終的に、クライアントの自立を促していく。

セッション8〜10にIda Rolfの考えたロルフィングの「終わりがあること」の考えが詰まっていると思う。
なぜならば、【RolfingコラムVol.33】でも触れたが、

  1. クロージング(終わり、自立を促すという意味)に向けて何をすべきか?
  2. 今まで学んだことは何か?
  3. 今後どういった方向へ進むのか?

という3つの視点でクライアントと対峙、コミュニケーションを取りながらセッションは進むからだ。
本コラムで度々触れているが、ロルフィングは、手・肘・腕を使って、筋肉を包む筋膜にゆっくりと圧を加えながら、10回のセッションを通じて施術者がクライアント の全身に触れ、緊張を解放していく。
そして、セッション10が終わった頃には、重力に対して身体が整っていくようになり、最終的にはクライアントが自然本来の身体の動き方を取り戻すことで、セッションは終わる。
本コラムでは、ロルフィングに「終わりがあること」について触れた。今後、ロルフィングの特徴である、「身体の整理」と「心理的、知覚的な変化」についても取り上げたい。
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この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka