2016年11月11日、Bone Workの3日目が終わった。Bone Workの初日と2日目の模様は前回書いた(「初日と2日目」参照)。今回は、前回書かなかったワークショップの雰囲気について触れたい。
最初の2日間半は、生徒同士による練習が行われる。首から足まで、基礎的なBone Workの手技を先生のSharon Wheeler(以下Sharon)が紹介。
さあ、やってみよう!
と練習が始まった。
基本は、Bone ChangeとBone Rollingという二つのアプローチを取る。
Bone Changeは、骨折している骨など修復が必要な骨に対して直接圧迫を加えることで、骨に変化をもたらすもの。Bone Rollingの方は、骨と骨との間を適切な位置に戻すために、骨同士を圧迫していくもの。いずれも、手で骨をつかんだ上で、適切な圧迫を加える。Sharonによると、合気道や空手で投げ出すような動作(屈筋と伸筋を使う)に似ているという。
ポイントは、掴んで圧迫したらしばらく待つこと。不思議なのは、待つとやがて骨が動き出すのだ。そして、骨の動きを追っていけば、身体が適切な位置を探し出し、止まる。
Sharonが偶然にも1970年代にこの手法を見つけたのだが、見つけた当初、なぜこうなったのか?がわからなかったので、Ida Rolf(以下Ida)に聞いたという。それを聞いたにもかかわらず、Idaは何が起こったのかを答えることができなかった。そして今でも、なぜ骨が動き、自分の位置を見つけるのか?は科学的にわかっていない。
科学的にわかっていないにもかかわらず、役立つから教えるというのは、まさに実践的なSharonらしさが出ていると思う。2017年以降、Robert Schreipらのドイツの研究グループで科学的な研究も進むらしいが、果たしてどのように解明されるか。楽しみにしていたい。
午後からは外部から7名のクライアントを呼び、参加者14名で自由にテーブル(施術用ベッド)を移動しながら、施術に臨んだ。持ち時間は2時間半。Sharonから学んだ様々な手技を試すいい機会となった。クライアントのセッション前に問題を伺い、私は3つのテーブルを移動して、Sharonのアプローチの仕方を見学しつつ、施術をする際にどういった点を心がけているのか?について話を伺うことができた(次回のコラムで触れる予定)。
興味深いのは、とにかく諦めないということ。最後までクライアントと向き合い、解決するために努力する。そういった頑固さ(Stubbornと表現)が今の自分を作った、と言っていた。
4日目は、14名のクライアントが午前と午後にお越しになる予定。どのような気づきがあるのか、楽しみたい。
2026年8月の注記
Bone Workの手順の中心にあるのは、待つことだった。骨を掴んで適切な圧迫を加えたら、しばらく待つ。すると骨が動き出す。その動きを追っていけば、身体が適切な位置を探し出して止まる。施術者が正しい位置へ動かすのではない。
前回の記事に書いたIdaの言葉——施術を行えば身体の各部位は自ずとどこに自分の家(Home)があるかわかる——が、ここで手順として形になっている。そして11年後、2025年のアドバンスト・トレーニングでNeutralが定式化されたとき、それは「何かを起こそうとする力と、起きるのを待つ静けさの、ちょうど良いバランスに身を置くこと」と説明された。
Alanが2014年のメンタリングで、触れる前に20分かけて距離を狭めていったのも同じことである。待つことが、技術の中身になっている。
この回にはもう一つ、当時の自分の反応が残っている。Sharonが1970年代にこの手法を偶然見つけたとき、なぜそうなるのかがわからずIdaに聞いたが、Idaにも答えられなかった。そして現在も科学的にわかっていない。それでも役立つから教える——この態度に対し、「果たしてどのように解明されるか。楽しみにしていたい」と書いている。説明を求める側の反応である。
その解明を担う人物として、この記事にRobert Schleipの名前が出てくる。当時は名前だけの存在だった。ミュンヘンで基礎トレーニングを受けた時期には既にFaculty Memberから離れていたため、同じERAの中にいながら会う機会がなかった。
10年後、その研究は実際に形になった。Schleipは筋膜そのものへ関心を移して生理学の博士号を取得し、2007年の第1回Fascia Research Congressの立ち上げに関わり、2025年8月には23年分・563名のデータを解析した論文を発表している(「筋膜研究の第一人者が光を当てた、23年分の記録」参照)。
10シリーズ完了者で、股関節と膝関節の屈曲可動域、体幹の左右対称性、胸郭の拡張に有意な変化が確認された。
ただし、対照群を持たない後ろ向き研究であり、Schleip自身が限界を明示している。論文のタイトルもEffectではなくInfluenceである。骨がなぜ動くのかは、依然としてわかっていない。
10年経って変わったのは、説明がついたかどうかではなく、説明のつかないものを記録し続ける仕事が、どういう形で実を結ぶかを見たことだった。この論文の元になったのは、ロルファーのHelen Jamesが23年間、手順を一度も変えずに測り続けた記録である。
満足のいかなかった症例も外さずに残していた。説明できないものを扱いながら誠実であるとは、そういうことなのだと思う。Sharonが2016年に取っていた態度は、その一つの形だった。



