Gael Rosewood WS(2)〜呼吸をRolf Movementと音からアプローチする

2017年3月26日(日)、ワークショップの3日目が終わった。

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基本、ベッドを使ったパートナーと組むテーブルワークと自分でもできるヨガマットを使ったワークの2つのアプローチの説明でワークショップは進む。

初日は、Rolf Movementの歴史と基本的な原理について説明に費やされ(初日の模様については「Gael Rosewood WS(1)〜Rolf Movementの歴史と基礎的な原理について知る」参照)、後半はロルフィング10回セッションとRolf Movementはどう結びつくのか?に話は進んだ。

「呼吸を深める」セッション1と「土台を整える」セッション2をどのように自分でもできるようになるのか?Rolf Movementの動きを取り入れつつ、ワークを紹介。足のワークはセッション2にすぐにでも取り入れることができるので実践的だ。何と言っても、Gaelの説明が本当にわかりやすいため、理解が深まる。

今回は、セッション1の「呼吸を深める」と、音(発声、ハミング音)の振動について書きたい。

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セッション1をRolf Movementとどのように関連するのか?から説明があり、自分でヨガマットを使ったワークの紹介があった。興味深かったのは、音の振動(ハミングの音)を取り入れたこと。

ミュンヘンで行われたロルフィングのトレーニングのPhase IIでは、Giovanni Felicioni先生のアシスタントとしてPatricia Von Weich先生が参加(トレーニングの模様については「トレーニングの振り返り」参照)。

PatriciaはEmilie Conradが創始したContinuum Movementについて詳しかったため、ロルフィングのセッション中にハミングの音を使ったワークを取り入れていた。

Dock at Dusk

Gaelは1980年にEmilieと出会い、Continuum Movementについても詳しいということもあり、今回の呼吸を深める際に、ハミングの音を使っていたのだが、その音として、Oの音(OHの音、オームのOHに近い)と、THの音(舌を歯に挟んで音を出す)の2種類を試した(GaelはHumming(ハミング)の音と表現)。

音で、身体に変化を及ぼすことを改めて実感し、身体の楽器としての音の大切さを実感した(以前音については「ヴォイス・ヒーリング講座 in ゆるり庵に参加して〜声の可能性を実感する」にも書いた)。

Gaelによると、2つのハミング音によって身体内にスペースが生まれるようになるという。そして、クライアントとロルファーの双方が音を出すと、より相乗効果が生まれるとも。

では

「ハミング音がどのように身体に影響を及ぼすのか?」

Gaelはその意義を普段の呼吸のリズムから離す(Break the Breathing Patternと表現)効果があると説明した。

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実は、呼吸にもジャッジが入ると、

「ちゃんと呼吸しなければならない」「正しく呼吸しなければならない」

という意識へとシフトする。

そのことから、

呼吸がマインドにコントロールされる

状態へとなってしまう。

ヨガやピラティスの場合は、ポーズに呼吸を合わせて動作を取り入れることで、リズムを整えるのだが、この場合には、必ずしもマインドからコントロールされた状態から抜けられるとは限らない。

呼吸系というのは神経系と結びついていることはよく知られていることだが、Gaelから教わった考えによると、不安(Anxiety)と興奮(Excited)の2つの状態は呼吸から見ると同じ状態に置かれていることになるという。

口からハミング音を発し振動を全身にくまなく伝えることで、有機的な(Organic)手法で、呼吸が徐々に沈静化していく。感覚も研ぎ澄まされ、最終的に組織全体に浸透し、今まで意識できなかった身体の場所が意識できるようになるという。結果、身体のResilience(回復力、対応力)が増していく。

音と身体についてはもう少し探求していきたいアプローチ。

次回本コラムでは、肩甲骨帯と骨盤帯についてのアプローチについて書きたい。

2026年8月の注記

この回で教わったことの核心は、Break the Breathing Patternという一語に尽きる。呼吸を正しくするのではない。いつものリズムを一度成立させなくする。

Gaelの説明の運びが面白い。呼吸にジャッジが入ると、ちゃんと呼吸しなければならない、正しく呼吸しなければならないという意識に変わる。その時点で、呼吸はマインドに支配されている。だから外から音を入れて、普段のリズムを断つ。

前回の回で、Gaelが言葉がけについて述べたことを書いた。何が正しいか、どう是正するかではなく、どのように新しい選択肢を用意するか。ここで起きているのは、その原則を呼吸に当てはめたものである。正しい呼吸を教えるのではなく、いつもの呼吸を一度崩す。崩れたところに、別の呼吸が入る余地ができる。

11年経って引っかかるのは、この記事が自分の練習への疑義を書き流している点だ。

ヨガやピラティスの場合は、ポーズに呼吸を合わせて動作を取り入れることでリズムを整えるが、必ずしもマインドからコントロールされた状態を抜けられるとは限らない。そう記している。この時点でアシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨガを10年以上続けていた。ヴィンヤサは呼吸と動作を厳密に同期させる体系である。つまりこれは、自分の中心的な練習に向けられた指摘だった。にもかかわらず、他人事の記述として通り過ぎている。

いま同じ指摘を受け取り直すと、意味が変わる。同期そのものが問題なのではない。同期を正しく行おうとする意識が入った瞬間に、練習が思考の側へ移る。20年続けてわかるのは、ヨガの練習で最も難しいのは形でも柔軟性でもなく、この移行を起こさないことだという点だ。

そしてこの答えは、Gaelから聞くより一年半前に、すでに手元にあった。

2015年11月、渋谷でプラーナーヤーマの連続講座を三日間受けた。呼吸を止めて二酸化炭素の濃度を高め、体腔内の圧を上げて神経系に働きかける技法である。腹式呼吸から始まり、ウディヤーナ・バンダ、アグニ・サーラ、シンハ・アーサナ、ジーヴァ・バンダ、ブランマー・ムードラ、カパーラバーティ、ナーディ・ショーダナまで、八つの準備のエクササイズを学んだ。前提となるのは、身体の不必要な緊張を取り、弛緩させる部分と緊張させる部分を自分の意思で自由に扱えること。緊張が残っていると圧がかかりすぎ、効果が得られないどころか有害にもなる。

その講座で言われたことが、Gaelの指摘とほとんど同じだった。知識が増えると、回数は正しいか、やり方は合っているか、という思考優位の状態に陥る。だから実践の際には、知識を一度手放す。矛盾しているようだが、そうすることで、腑に落ちた知識のほうが必要なときに助けてくれる。

Gaelは音を外から入れてリズムを断つ。プラーナーヤーマは知識を手放すことで、内側から同じ状態を作る。手段が逆向きなだけで、外そうとしているものは同じである。

さらにその講座では、伝統的なハタ・ヨーガの実践は期待して行うものではなく、一回で効果が実感できるものでもない、とも言われた。定期的に続けていると、身体が準備できたと判断した時点で、その人にとって必要な解決策が内側から出てくる。だから身体に優しい。

この構造は、二年後のRolf Movementの訓練で経験することになる場と同じである。Part IIで三回シリーズを組むとき、手順は細かく教わらなかった。こうしなければならない、が一切なかった。代わりに場をホールドすることに力点が置かれ、そこから各自のやり方が出てくるのを待つ設計になっていた。呼吸法の側から言えば、身体が準備できるまで待つということだ。

2015年の秋に呼吸法として教わり、2017年の春に呼吸のワークとして教わり、同じ年の夏から二年半かけて教え方として経験した。三度とも、正しさを課さないことが要点だった。当時は三つを別のものとして記録している。

もう一つ、この記事には二年前の伏線がある。

ミュンヘンでのPhase IIで、Giovanni Felicioni先生のアシスタントを務めていたPatricia Von Weich先生が、セッション中にハミング音を使ったワークを取り入れていた。PatriciaはEmilie Conradが創始したContinuum Movementに詳しかったからだ。そして2017年、Gaelもハミング音を使う。Gaelは1980年にEmilie Conradと出会っている。

同じ源が、二人の教師を経由して別々に届いている。前回の回で、Sharon WheelerとHubert Godardの系譜がGaelという一点で交差すると書いた。ハミング音についても同じ形が起きている。二度目に受け取ったとき、それが同じところから来ていることに気づいた。

不安と興奮は呼吸から見れば同じ状態に置かれている、というGaelの指摘についても触れておきたい。生理学的には交感神経の亢進として同一であり、後にポリヴェーガル理論の枠組みで扱うことになる。2015年のPhase IIIでは理論として学び、2017年に呼吸の現場で聞いた。理論と現場のあいだに二年の間隔がある。この順序は、このトレーニング期間を通じて何度も繰り返される。

最後に、Resilienceという語について。この記事では柔軟性と訳している。いまなら回復力と訳す。柔軟性はヨガの文脈でFlexibilityと混同されるが、Gaelが言っていたのは、壊れたあとに戻る力のほうだった。呼吸のパターンを一度壊すことと、Resilienceが増すことは、同じ話の表と裏である。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka