Jonathan Martine(以下Jon)のワークショップもパート2に入り、残りがあとわずか2日間となった。パート2の内容はほぼパート1を踏襲しているが、それに加えて、血管系と内臓系にどのようにアプローチしていくのかという点に焦点が当たっている。
本ワークショップについては、本コラムにて6回書いた。
- 1回目:神経系とロルフィング
- 2回目:痛みと神経へのアプローチ
- 3回目:「教える」と「気づき」
- 4回目:「コーチングと全方位的傾聴」
- 5回目:よりシンプルなアプローチを学ぶ
- 6回目:トレーニング風景
パート2でも、パート1で学んだ、神経系にアプローチする根拠となるHiltonの法則の説明から入った。
私が理解できた範囲で、今回のワークショップの内容について書いていきたい。
表層である皮膚に広がっている皮神経(Cutaneous Nerve)が、深層の神経とつながっている。深層の神経につながっている主なものとしては、関節包と靭帯、筋肉と関節におけるそれらの付着部、臓器の神経叢などが挙げられる。皮膚層の皮神経に軽い圧を加えて影響を及ぼすことで、そこにつながる深層の部分に影響を及ぼすという。
Dermo Neuro Modulation(DNM)というDiane Jacobsが開発した手法の原理にもなっているこの法則は、実際にJonの手技を学び、体感していくことで、その凄さが腑に落ちてくる。この原理のもとに、パート1では神経へアプローチしていく。
それをさらに支えているのが、侵害情報とRuffini受容体についての説明である。人体に侵害情報(nociceptive information)が送られると、その部位は危険であり守る必要がある、ということになる。
一方で、安全だから大丈夫だという非侵害情報(non-nociceptive)を四肢から脳へ送ること(求心性情報、中枢神経系へ情報を送ること)もできる。皮膚にはRuffini受容体が密集しており、この受容体へアプローチすることで可能になるという。皮膚層をゆっくりと動かすことによって、非侵害情報、つまり安全であるという情報が送られることになる。
ロルフィングや神経系へのアプローチが何をしているのかというと、身体が危険だと思っている場所や、認識の薄い場所に対して、危険だと思う必要はなく安全である、と認識させることである。そのことで、結果的に脳が身体地図を再構築し、身体へ変化を及ぼすことになる。
今回、こういった内容の話を聞けただけでも、学んだ甲斐があったと考えている。
身体へのタッチの強さは、その人が環境に対してどれだけ危険を察知しているかということであり、それが大きく影響を及ぼしていると認識する必要があること。ソースポイントセラピー、クラニオセイクラル、神経系へのアプローチのようなソフトタッチと、ミュンヘンで学んだ筋膜へのアプローチのようなより強いタッチとで、人によって効果が違ってくること。つまり、解決法は一人一人違うということ。そうした理由が分かったからだ。
Jonは、身体が危険を察知したときにどういった序列になっているのかについても紹介した。筋肉よりも血管、神経、内臓が大切だという。例えば、血管の循環に何らかの障害が出ると、それが脳を介して、血流を良くするための防衛反応が起きることも説明していった。
興味深いのは、タッチの違いが神経系と血管系で異なることだ。神経系の場合には、皮膚の薄い層でのアプローチでポンピングと呼ばれる手法を使う(「神経系とロルフィング」参照)。血管の場合にはスラックしていく。スラックとは組織をたわめるという意味で、たわめてから延ばすという手法を使う。
パート2を通じて、内臓系(膀胱、肝臓、胃、食道、小腸、結腸、心臓、腎臓)へのアプローチの仕方も身につけているが、血管や神経系についての知識があれば、どこに注意したらいいのかも明確になる。
ミュンヘンではここまで詳細に学ぶことがなかったので、本当に新鮮に学べている。しかも、ベストタイミングで。
なんといっても、ロルフィングの10回のフレームワークが頭の中に入っているので、どこに当てはめていったらいいのかを考えながらワークショップを受けられる。ワークショップが終わった後もセッションを提供しているので、そこでも復習ができるからだ。
あと残りは2日間。どのように10回セッションに応用するのかについても触れる予定だ。
2026年8月の注記
この回で書いているのは、タッチの強さについての疑問に説明がついた、ということである。
ソースポイントセラピーやクラニオセイクラルのようなソフトタッチと、ミュンヘンで学んだ筋膜へのより強いタッチ。この二つで、人によって効果が違ってくる。同じ身体に触れているのに、届く人と届かない人がいる。その理由が分かった、と書いている。
説明の骨格は、危険と安全という一つの軸だった。侵害情報が送られれば、その部位は危険であり守る必要があるということになる。逆に、皮膚のRuffini受容体へゆっくりと働きかければ、安全であるという非侵害情報が脳へ送られる。身体が危険だと思っている場所に、危険ではないと認識させる。結果として脳が身体地図を書き換える。
だから、タッチの強さは、その人が環境に対してどれだけ危険を察知しているかによって、効くかどうかが変わる。解決法は一人一人違う、とこの記事は結んでいる。
前に書いたとおり、開業から1年ほどのあいだ、IMACとソースポイントセラピーを学んで混乱し、しばらく手放していた。混乱の中身は、おそらくこれだった。まったく違う触れ方が並立していて、どちらを選べばいいのか分からない。この回は、両方が成り立つ理由を渡している。
9年後、同じ問いに別の形の答えを受け取ることになった。2025年のアドバンスト・トレーニングのTaxonomyである。構造的・セグメント的、バイオメカニカル、機能的、心理生物学的、エネルギー的の5つのうち、いま何から働きかけるかを選ぶ。ここでは危険と安全という一本の軸で説明されていたものが、5つの観点として整理されている。
一本の軸と、5つの分類。どちらが優れているという話ではない。ただ、一本の軸は目の前の一人に対して使えるが、選択肢を並べて比べることはできない。分類は、比べることを可能にする。
そのTaxonomyのうち、エネルギー的と呼ばれる領域について、この講座は枠だけを置いていた。パート2の項目にはエネルギーの流れに関する内容が含まれていたが、実際に渡されたのは大枠の見せ方の紹介にとどまり、この記事にもエネルギーという語は出てこない。正面から受け取ることになったのは、9年後である。
枠に名前があることと、そこで何かが渡ることは、別のことだった。項目として立っていたものが、実際には触れられずに過ぎる。当時それを不足として感じていない。名前を知らなかったからである。
その領域に名前がついたのは、2025年になってからだった。




