第4回:吸気型の身体、呼気型の身体──重力から呼吸を見る

呼吸シリーズ第4回(全4回)

はじめに

今まで呼吸に関して3回、本コラムで触れた。

今まで呼吸に関して3回、本コラムで触れた。呼吸のプロセスで吐ききったあと、脳幹の呼吸中枢から指令が脊髄へ伝えられる。そこで吸気に必要な筋肉が収縮することで、肋骨が拡大していくこと(「息を吐くのに力はいらない──呼吸と意識・無意識」参照)、その際に横隔膜が重要な役割を果たすことを説明した(「横隔膜は頭蓋骨とつながっている──呼吸と内臓の配置」参照)。そして、姿勢においては、ExtensorsとFlexorsが大事でそのバランスが崩れると、呼吸にも影響することを述べた(「姿勢が崩れると呼吸が変わる──伸筋・屈筋と斜角筋」参照)。

Phase IIのトレーニングの際に、重力との関係についてどのように見るのか?を学んだ。

調えていくための指標として、身体にどのような重さがどこにかかっているのか?それはgとg’(gは、gravityの重力)という二つの指標を使う。gとg’とは

  • g:重さが身体全体に対して、前面か後面か?
  • g’:股関節から見て重さが上半身に対して、前面か後面か?

である(「力を抜くこと(3)〜重力とスペースの意識」参照)。
walking body ver 2
呼吸との関係においてgとg’はどのように見ればいいのか?Phase IIIのトレーニングでは、呼吸とg、g’には2つのパターンについて取り上げた。

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左が吸気型、右側が呼気型だ。

吸気型はg’が股関節からみて前方(Anterior)に傾いている。そのため肩を含めた肩帯(Shoulder girdle)を後方(Posterior)にすることでバランスを取っている。ちなみに骨盤は前傾(Anterior)。この場合には、背骨はまっすぐ伸展。このような状態だと吸気がしやすく、呼気がしにくい場合が多い。背骨が伸びているので、菱形筋(Rhomboids)や背骨に近い肩甲骨(scapula)関連の筋肉が緊張している。

呼気型はg’が股関節からみて後方(Posterior)に傾いている。そのため肩を含めた肩帯(Shoulder girdle)を前方(Anterior)にすることでバランスを取っている。ちなみに骨盤は後傾(Posterior)。このような状態だと吸気がしにくく、呼気がしやすい場合が多い。背骨が屈曲しているので、身体の前側の筋肉、大胸筋(Pectoralis Major)、小胸筋(Pectoralis Minor)や前鋸筋(Serratus Anterior)が緊張している。

ここで注意すべきことは、必ずしも吸気型(呼気型)が吸気(呼気)優位とは限らないこと。あくまでも例外がある可能性がある。ただ、この考えは呼吸に対しての一つのモデルで、仮説を立てるのに非常に役立つ。

余談になるが、一つ紹介したい言葉がある。

私の尊敬する今は亡き小室直樹氏の「論理の方法」という本がある。そのはしがきに、モデルについて以下のように書いてある。

「論理を自由自在に使いこなすためにはどうしたらよいか。その秘訣はモデルを自分自身で作ってみることです。モデルは論理の結晶だからだ。
(略)
モデルとは本質的なものだけ強調して抜き出し、あとは棄て去る作業です。」

そう考えると、本コラムで紹介しているTonic Function、ポリヴェーガル理論や解剖学もモデルの一つだ。あくまでもロルフィングにおいて大切になるのは実際に手で触れて感じることの重要性。

本コラムでは、呼吸について4回にわたって紹介していったが、ロルフィングにおいて呼吸に注目することで姿勢がどう影響してくるのか?わかっていただけたと思う。

ロルフィングの動作で見るのは、呼吸と歩行。今後、何回かに分けて歩行について考えていきたい。

2026年8月の注記

このシリーズ4本は、2015年2月、ミュンヘンでのPhase IIIトレーニング期間中に書いたものである。認定ロルファーになる1ヶ月前、学ぶ側にいた時期の記録になる。

参考文献に挙げたAline Newtonの論文「Breathing in the gravity field」は、当時のトレーニングで配布された資料のひとつだった。論文を通じてTonic Functionと呼吸の関係を知り、それを自分の言葉に置き換えようとしたのが、この4本である。

3年後の2018年1月、Rolf MovementトレーニングのPhase 2で、Aline Newton先生から直接Tonic Functionの講義を受けることになった。2日目に時間をかけて説明してくれた内容は、姿勢を安定させるためのTonus(筋肉の力)が、組織、知覚、思考と言語、意味とシンボル、共同運動という5つの因子に影響を受けるというものだった(詳細は「いい意味での混乱+Tonic Functionについて」参照)。

そこで知ったのは、Newton先生がフランス語を解し、Hubert Godard本人から直接学んでいるということだった。

2015年に英語の論文として読んだTonic Functionは、フランス語で語られたGodardの考えを、Newton先生が英語へ移したものだった。この4本を書いたとき、その経路は見えていなかった。論文の背後に、フランス語から英語への移し替えという一段階があり、その仕事をした人が実在していた。3年後、その人から口頭で同じ理論を受け取ることになる。

理論が言語を越えて伝わるとき、誰かが橋渡しをしている。書かれたものだけを読んでいると、その存在は見えない。

なお、初回セッションと呼吸の関係については、2022年に施術者の側から改めて書いている(「呼吸を調える 身体を整える際に、真っ先に「呼吸」を整える理由は?」参照)。学ぶ側で書いた4本と、7年後に教える側で書いた1本を並べると、同じ主題が違う角度から見えてくる。

呼吸シリーズ(全4回)

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この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka