【R#78】Phase III(19)〜Case Presentation(2)〜セッション7を終えて

ロルフィングのトレーニングも第6週目に突入。10回セッションのうち7回を終えた。1〜3回はSleeve(表層)セッション、4回〜7回は Core(深層)セッションと分かれ一つの区切りなので、前回に続きCase Presentationが行われた(3回目のセッションを終えた後のCase Presentationについては【RolfingコラムVol.61】参照)。
iStock_000003784355XSmall
もっとも興味深かったのは、身体地図との関係で統合セッション(8回〜10回)について話し合いが行われたことだった。
7回目まではどのように身体にアプローチするのか?目的が明確だ。しかし、8回目以降になると、クライアント一人一人のニーズに合わせてセッションの内容が変わっていく。なぜならば、10回でセッションで完結。10回のセッションを通じて学んだことを自分の生活に取り入れていくということでもあり、クライアントの自立性を促すため、一人一人のやり方が自ずと異なってくる【RolfingコラムVol.33】参照)。

7回目までのセッションを手順通りに終えると、身体のすべての部位を触れたことになる。その間、どういった問題点(又は課題)があるのかが明確になっていく。例えば、その人の問題点は、腰痛なのか?左右バランスなのか?肩こりなのか?等である。
また全身を触れたからといって身体の各部位が連動して動くとも限らない。特に、ロルフィングでは肩と骨盤の連動性を重視する。肩と骨盤が連動し背骨のねじれを使うと(ロルフィング用語では、Contra-lateralと呼ぶ)最小限の力で動きが実現するからだ(【RolfingコラムVol.33】参照)。
Jörg先生、Andrea先生と一緒に各々の生徒が10分の持ち時間で、1人の症例の簡単な要旨を写真(注:写真はセッション1の施術前、セッション3の施術後、セッション7の施術後の3枚で前側、右・左の側面と後側の4つの角度から撮った)を含めプレゼンを行った。
Holding The Sky
課題として興味深かったのは、ある女性のケース。その人は「南米の女性らしくなりたくない」というボディイメージを持っているためか、胸を隠すという無意識 な姿勢(ボディスキーマ)に現れていることが明らかになってきた。ここでいうボディイメージとボディスキーマというのは、2つの異なる身体地図のこと。
ボディスキーマとは、一つ目は脳が様々な外部情報を集めることで自動的(無意識的)に作られる身体地図。ボディイメージは、育った環境、文化等の主観的なイメージによって作られる地図。それぞれの詳細の内容について本コラムで触れた(【RolfingコラムVol.74】参照)。
Phase IIIに入ると、言葉をどのように使ってコミュニケーションをとるのか?ついて色々と言われるようになる。それは、ボディイメージに関係する。「南米の女性らしくなりたくない」というのはあくまでも本人のイメージであり、本人特有のもの。それに対してとやかく言われたくないのだ。施術する側からすれば、そのことに対して「正しい・間違い」といった判断をしないことが大切になる。また、この部分が緊張しているとか、身体の悪いところを指摘する場合も、ボディイメージを否定することにつながる可能性がある。コンプレックスを抱いていることもあるからだ。要は、ボディイメージは、自我=エゴに結びついているものであり、判断を下すとクライアントは否定された気持ちになる。

ロルフィングができることといえば、そのボディイメージに対して正面から向き合うのではなく、ニュートラルになること。そして、ロルフィングができることに 集中すること。それは、ボディスキーマで無意識になっている身体地図を意識化。新たな選択肢(新たなパターン)を提示することによって身体地図を少しずつ書き換えていくことだ。そのことで、ボディイメージが変わることを期待するのだ。
例えば、南米の女性に対する話題をしたとしても、それが正しい・間違いの観点で見るのではなく、新しい身体の使い方があるよ(例えば背骨を使った動き)、という形で身体に対する新しい見方を提供するのだ。そして10回までにある程度ボディイメージに対する見方に変化が出ることに期待する。
Case Presentationのときに気づいたのだが、ボディスキーマとボディイメージの関係は、コーチングにおけるBEINGとDOINGに似ていると思う。コーチングは、人の話を聞いて、その人のポテンシャルを上げるためにどうしたらいいのか?考える手段であることを本コラムで触れた(【RolfingコラムVol.27】参照)。
その際、
DOING=何をするか?
BEING=自分がどうあるべきか?
そして、BEINGという無意識になりがちな価値観に働きかけることによって(又は別の言葉で言えば価値観を書き換えていくことで)、意識に上るDOING が自然に変化するというのがコーチングの本質であると述べた。これはまさに、無意識なボディスキーマと意識的なボディイメージの関係に似ている。

ボディイメージと向き合うのは、ロルフィングの一つの醍醐味である。そしてクライアントによって十人十色だ。今回のCase Presentationでは様々なボディイメージの発表を聞くことができたが、10回のセッションを終えた段階でどのようにボディイメージに対する見方をクライアントは持っているのか?非常に楽しみだ。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka