五行という分け方──身体は自ずと整う方向へ向かう

**この記事は、2019年4月から10月にかけて受けた「からだの学校【東洋医学】」の記録に、2026年9月の視点から加筆したものです。**もとは講座の回ごとに5本に分かれていましたが、五行は分けて読むと全体像が見えなくなるため、一つにまとめました。末尾に、2026年から見て何が見えるようになったかを注記として加えています

講座について

2019年4月7日、神奈川県の Kei.K Aroma Studio で開かれた「からだの学校【東洋医学】」に通い始めた。全6日、1日2コマ、午前10時から午後3時まで。講師は札幌の風の音の治療院の安部雅道さん、鍼灸師である。

受けた理由は別の記事に書いた。大阪のヒロさん(佐藤博紀さん)のIMACという講座で、身体の可動域を測ることで経絡の状態を見ていく。その測られている側、つまり経絡や五臓とは何なのかを、東洋医学の側から知りたかった。

初日に配られたプリントは12ページしかなかった。東洋医学の本を開けば、陰陽や五行について詳しく書いてある。しかし、どこが要点なのかは書かれていない。安部さんの12ページは、そこだけを取り出したものだった。

氣を、イメージできる形にした

最初に教わったのは、東洋医学が何を扱っているかだった。

東洋医学は氣、つまりエネルギーという目に見えないものを扱う。ただ、氣と言われても実感が湧かない。そこで、イメージしやすい形を考えた。それが陰陽説と五行説である。

この順序が大事だと思った。陰陽や五行が先にあるのではない。目に見えないものを扱うために、後から作られた道具である。

陰陽は、比較するための道具

陰陽は、何を基準にするかを決めた上で比較する。だから、比較するものによって何が陰性で何が陽性かは変わる。

安部さんはこう言った。基準は自分で決めることができる。そこが東洋医学の面白いところであり、便利なところだ、と。

もう一つ、陰陽には、強い性質が弱い性質に影響を与えるという考えがある。寒い日にはその影響を受ける、といったことである。何を基準にするのかと分けて考えないと、たとえばマクロビオティックの陰陽の考え方は理解できない。

人は天の氣と地の氣を取り入れて生きている、という話もあった。天の氣は呼吸、地の氣は食事。人が選択を誤るのは食事のほうだから、食事を理解することが大事になる。

五行は、五つのグループに分ける

五行は、木・火・土・金・水の5つの性質である。人の性格や、身体の生理機能に見立てて考えていく。

それぞれの要素に、担当する臓と腑がある。

イメージとしては、臓は詰まっているもの、腑は空洞であり通り道であり、パイプにあたる。

面白いのは、五臓をどう整えるかに焦点を合わせると、五腑は勝手に整っていく、という考え方だ。通り道を整えるためには、詰まっているほうを整えればいい、ということになる。

そして相生と相剋。五行はお互いに影響を及ぼし合っているので、どこかが乱れると、身体は自ずとバランスを取り戻す方向へ向かう。

私はこの考え方に衝撃を受けた。

西洋医学のように、感情、個性、生理機能を細かく分けて扱うのではない。東洋医学は同じグループに分類し、それらを同じものとして扱う。そして、そのグループを整えればバランスが整う。細かい解剖学や栄養学を知らなくてもいい、ということになる。

バランスが整う方向へ働きかける、という点で、ロルフィングやソースポイントセラピー、IMACの考え方と向いている方向が同じだった。

火──心と小腸

ここから五行の各論に入る。

火の五臓は心臓、五腑は小腸である。

東洋では、心臓を、人の心と体の働きのすべてを管理するものとして見る。トップに君臨し、他の臓腑に指令を出している存在である。トラブルは各部署、つまり肝臓、脾臓、肺臓、腎臓が担当している。だから心臓に問題があるということは、相当な事態だと解釈していい。

このように、五行は各要素を別々に見るのではなく、つながりとして理解することが大事だと、安部さんは火の要素を扱うときにとくに強調していた。

一方で、感情を管理しているのは心臓ではなく腎臓だという。腎臓の働きが落ちると、感情の抑制が効かなくなる。

一見すると戸惑う話だが、西洋医学の側から見ると筋が通る。脳がストレスを感じると副腎(東洋医学では副腎も腎に含める)に働きかけ、アドレナリンやコルチゾールが出ることでストレスに対応する。副腎が働きにくくなればストレスに対処できなくなり、感情の抑制が効かなくなる、と考えられる。

こういったことを、西洋医学が出てくるはるか前から知っていたことになる。

心臓と小腸がペアになる理由も、イメージで説明された。どちらも動き続ける内臓である。心臓は拍動し、小腸は蠕動運動をする。安部さんは、イメージの重要性を何度も語っていた。

木──肝と胆のう

木の五臓は肝臓、五腑は胆のうである。

肝臓は疏泄を主る、と言われる。疏は通す、巡らせる。泄は外に出す、排泄する。そういう働きとして捉える。

肝臓は筋肉を管理するとも言われ、東洋では脳と筋肉の間のコミュニケーション、神経、とくに自律神経に関わっているとされる。肝臓に負担をかけると、身体が硬くなる。

そして肝臓は月経に大きく関わる。氣の巡りが悪いと生理が来るのが遅くなり、血の巡りが悪いと生理前に痛みが起き、血の汚れが溜まる方向へ向かう。

肝臓は消化吸収にも関わり、血液を貯蔵し、その調整も行う。とくに血液をきれいにする役割を担っており、肝臓と胆のうがもっとも働くとされる午後11時から午前3時までが、効率よく血をきれいにする時間だという。

だから木を整えるには、まず早く寝ること。そして目覚めをよくすることがポイントになる。

西洋医学の側から見ると、小腸で消化・吸収された食物は門脈を経由して肝臓へ送られる。肝臓で身体が利用できる形に加工され、心臓を経由し、血液を介して各臓器へ送られていく。余った栄養素は保管され、有害物質は解毒され、油を吸収しやすくするための胆汁酸が作られる。

つまり、小腸で吸収されたものは心臓ではなく真っ先に肝臓へ送られ、肝臓で血液がきれいになってから心臓へ行く。血液を作る、きれいにするという東洋医学の考えは、西洋医学の側から見ても理にかなっている。

肝臓は「怒り」の感情に関わるとされる。

ダニエル・キーオン(Daniel Keown)の『閃めく経絡』では、ここにヒスタミンが関わっているのではないかという推測が述べられている。ヒスタミンは身体の局所で働くが、時にあふれ出し、アレルギー、喘息、アナフィラキシー反応、かゆみを引き起こす。それがイライラや欲求不満につながり、結果として怒りの感情が湧いてくる。肝臓が血液からこれらを除去する能力によって変化すると考えれば、肝臓は怒りの感情に関わっていることになる、というのがキーオンの推測である。

土──脾と胃

土の五臓は脾臓、五腑は胃である。

ここは、西洋医学との違いがもっとも大きい。

西洋医学で脾臓といえば、左脇腹にある造血・リンパ器官で、大きさは10センチ×6センチ×3センチほど。乳幼児期には血球を作り、古くなった血球を処理し、血液を蓄え、リンパ球を作って免疫に関わる。

東洋医学の脾は、まったく違う。

役割を挙げると、口から肛門までの消化器全体を管理し、食べ物から氣・血・水を作り出す。食べ物を消化吸収し、全身へ輸送する。胃と小腸で消化・吸収してエネルギー(精微)を作り、それを巡らせることで全身を養う。飲食物の水分を肺や腎臓へ送り、体内の水分量を調整する。

西洋医学でいえば、口から入った食事が食道、胃、十二指腸、小腸へと送られ、胃酸や膵臓からの消化ホルモンの力を借りて分解され、小腸で吸収され、門脈を通って肝臓へ集められ、加工されて全身へ送られる。吸収されなかったものは大腸で水分を吸収され、便として排出される。

この一連の流れを監視し、司令塔の役割を担うのが、東洋医学でいう脾である。

ペアになる胃は、食べ物を受け入れ、初歩的な消化をして小腸へ送る。こちらは西洋医学と同じ役割である。

脾と胃の分担は、方向が逆になっている。脾は食物から作られたエネルギーを上、つまり頭、心臓、肺へ昇らせる。胃は食べたものを下、つまり小腸や大腸へ送る。

脾の働きが弱まると、食後の眠気、脱力感、めまい、内臓下垂などが起きる。胃の働きが弱まると、食欲低下、膨満感、ゲップ、嘔吐、口臭、便秘などが起きる。

脾は筋肉、東洋医学でいう肌肉に栄養を蓄える役割も担っている。肝臓も筋肉を管理すると言われるが、こちらは動きそのもの、つまり可動域やのびのびと動くこと、柔軟性に関わるという。分担がある。

心理との関係も面白かった。脾が正しく働くと、知恵を使って深く考えることや、感情的に思うことができるようになる。しかし過度な思い込みや悩みは、逆に消化器の働きを下げてしまう。

だから東洋医学では、八方塞がりの困った問題が起きたら消化器を整えなさい、ということになる。

なぜそうなるのか。東洋医学では、食欲は氣血を作りたいという欲から起きると考える。興味深いのは、食欲を西洋の心理学のようにいくつかの欲求に分けず、一括りにして、物欲を含めたすべての欲求を含めていることだ。

脾は、消化器全体を管理しているので、口や唇の状態を見ることで働きの状態が分かるという。口内炎や口角炎が手がかりになる。甘いものの取りすぎ、偏食、化学調味料、添加物は脾に負担をかけるので、食事から整えていくことになる。

消化器を動かすには、あくびが重要だという話もあった。口を動かすことである。氣を巡らせるため、内臓をゆるめるため、そして活動モードとおやすみモードを切り替えるために意味がある。

金──肺と大腸

金の五臓は肺、五腑は大腸である。

西洋医学では、肺は呼吸で取り込んだ酸素と二酸化炭素を交換する器官である。

東洋医学の肺は、範囲がずっと広い。鼻、喉、気管、肺、皮膚を含む呼吸器全体を管理する。呼吸によって天の清氣を取り入れ、体内の濁氣を放出する。呼吸と食事によって作られた氣を巡らせる。そして、人に気を使うといった気働きも肺が管理する。気を使うということは、自分の氣を相手に渡すことだと東洋では考える。

皮膚を管理し、気分を管理する内臓なので、心理的な部分も扱う。デリケートな働きだと言っていい。

東洋医学では、身体の中のいらないものを外へ発散させるとき、肺がコントロールすると考える。目に見えないものは肺、目に見えるものは大腸、という分担である。

肺の機能が低下すると、発散が下手になる。ストレスの発散も含まれるので、肺が弱るとストレスをうまく発散できなくなる。

一方で、肺には下へ降ろす役割もある。東洋医学でいう粛降である。吸気で酸素を取り入れて下へ降ろし、腎臓へ蓄える。毛穴を閉じて熱を体内に留め、水分は腎と膀胱へ送る。肺の働きが弱まると、地に足がつかなくなる。

肺は、外の刺激から身体を守るバリアの役割も果たす。自然なものを受け入れ、不自然なものは受け入れない、という選別をする。肺の働きが弱まると、肌荒れや肌の症状として現れる。ただし安部さんは、皮膚症状が出た場合、肺だけでなく大腸や肝臓の働きの低下が肺に影響して起きることも多いと話していた。

肺は呼吸器の入り口である嗅覚にも影響するので、良い匂いが呼吸を助け、発散を促し、緊張をゆるめてくれるという。スパイス、ハーブ、コーヒーなどが挙がった。

心理との関係では、肺の働きが落ちると憂いや悲しみが出てきて、悲観的になる。そして憂と悲は氣を消耗させるので、さらに肺の働きを低下させていく。

ペアになる大腸には、多くの常在菌が住んでいる。

マーティン・ブレイザーの『失われてゆく、我々の内なる細菌』によれば、人の身体には合計100兆個の常在菌がいて、種類は1,000から5,000と推測されている。人間の全細胞数である37兆個より多い。西洋医学では、常在菌の多様性が健康の鍵であり、腸のバリアとして働いていると考えられている。

皮膚にも、汗腺から出る水と皮脂から出る脂肪酸を餌にして、常在菌がバリアを作っている。

肺(皮膚)と大腸(腸)がペアを組んでバリアの役割を果たす、という東洋医学の見方と、この知見は重なる。

水──腎と膀胱

水の五臓は腎、五腑は膀胱である。東洋医学の腎には、副腎も含まれる。

西洋医学の腎臓の主な働きは、尿を作ることだ。口から入ったものの大半は胃腸で吸収され、吸収されなかったものは便として出る。便は胃腸を通過するだけだが、尿は必ず血液を経由し、すべて血液から作られる。

腎臓では毎日180リットルの原尿が糸球体から作られ、その99パーセントが尿細管で再吸収される。ここで身体に戻す量を調整することで、血液の成分量と水分量が調整される。

面白いのは、この尿細管の働きが、他の臓器から出る物質の影響を受けることだ。心臓から出るANPが尿細管に働きかけてナトリウムの排出を調整する。血液中のカルシウム濃度が下がると副甲状腺からPTHが出て、骨からカルシウムを放出させ、腎臓でのリンの再吸収を抑える。

つまり腎臓は、さまざまな臓器とやりとりしながら血液の成分を調整している。西洋医学の腎臓のイメージは、血液全体を管理する、である。

東洋医学の腎も、身体の水の量を調整することで陰陽のバランスをコントロールする。共通している。

老化との関係も共通している。腎臓の糸球体から分泌されるクロトーという物質の遺伝子を欠いたマウスは、早老症の症状を示す。腎臓は老化に関わっていると言われる。東洋医学も、腎と老化には関係があると考える。

副腎のほうは、不安や恐怖を感じたときのストレス反応に関わる。扁桃体が興奮し、視床下部を経由して副腎に指令が届き、コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンが作られる。アドレナリンは闘争・逃走反応を起こし、比較的即効性がある。コルチゾールは日内変動があり、もう少し穏やかに長く作用する。

東洋医学でも、腎は不安や心配に関わるとされる。ここも共通している。

では、東洋医学は腎と膀胱をどう見ているのか。安部さんが挙げた役割はこうだった。

精を蔵す。生きるためのエネルギーである精を、腎、つまり丹田に蓄える。

水液を主る。体液を管理し、身体の水の量を調整することで陰陽のバランスをコントロールし、尿の量を調整する。膀胱は不要な水分の貯蔵と排泄に関わる。

作強の官。腎は身体を強固にし、肉体的・精神的なストレスに抵抗する。肉体面では、体の中の堅いもの、つまり骨、髄、脳、歯とその中身を管理する。腎が弱ると骨や髄が弱まり、歯が抜け、姿勢が悪くなる。精神面では、驚きや不安の感情に関わる。

腎は耳と二陰、つまり尿道と肛門に開竅する。そして腎の華は髪にあり、髪には腎精の状態が現れる。

腎は基本的に、エネルギーを蓄え、中で燃やす。冬のイメージがある。

面白いと思ったのは、腎が氣、すなわちエネルギーであり精であるものを蓄える臓器だということだ。

腎には2種類の精が蓄えられている。先天の精は、両親から受け継いだ精氣で、生長、発育、生殖に必要なエネルギーである。後天の精は、生まれてから脾と胃で作られる精氣で、活動に必要なエネルギーである。

幼少の頃は腎がまだ完成していないので、子供は腎が弱いのが普通だ。そして老化とともに、腎の働きも弱まっていく。

東洋医学では、男性は氣の生き物、女性は血の生き物と言われ、性差があると考える。女性は7の倍数、男性は8の倍数で考えると分かりやすい。女性は35歳、男性は48歳頃にピークを迎えることになる。

氣を使いすぎると、後天の精ではなく先天の精を使ってしまう。燃え尽き症候群にもつながり、寿命も縮まる。だから、脾と胃で作られる後天の精を補いながら、先天の精への借金を少しずつ返していくのがいい、と安部さんは言っていた。

腎の氣には腎陽と腎陰の2種類がある。腎陽は臓腑や組織を動かし、温める。活動するための熱を作る役割である。腎陰は臓腑や組織を養う。身体を回復させる働きである。

キーオンの『閃めく経絡』には、副腎皮質から出るコルチゾールが腎陰、副腎髄質から出るアドレナリンが腎陽として働いているのではないか、という考察がある。

興味深いのは、見ているものの違いだ。西洋医学は目に見えないホルモンと臓器間のやりとりで腎を捉える。東洋医学は、目に見える外見を見る。骨(姿勢)、歯、脳、耳、髪、肛門と尿道。腎の働きが弱まると、これらに影響が出るという。

東洋医学では、髪は余った血で作ると考える。だから血の生き物である女性は、最後まで髪が残る。

姿勢との関係も教わった。腎は「立」に関わる。適度な立位は腎にいい。同じように、肝は歩、心は視、脾は座、肺は臥と、それぞれに姿勢が割り当てられている。

つながりとして見る

五行を一つずつ見てきたが、安部さんが繰り返していたのは、分けて見ても分からない、ということだった。

木・火・土・金・水と臓器別に学ぶが、それぞれが互いにやりとりすることで健康が保たれている。つながりを理解して初めて、全体像が見えるようになる。

この見方は、西洋医学の側でも同じところに届いている。

2018年に放送されたNHKスペシャル「人体」は、体の中には巨大な情報ネットワークがある、というコンセプトで作られていた。臓器から臓器へ、細胞から細胞へ情報を伝えている物質を「メッセージ物質」と名づけ、実例を挙げている。

古い例で言えばホルモンである。成長ホルモンは脳の下垂体から、性ホルモンは性腺から、というように、特定の場所だけが出す物質として知られてきた。しかし今では、心臓、腎臓、胃、腸といったさまざまな臓器や、筋肉、脂肪細胞、免疫細胞からもメッセージ物質が出ていて、臓器同士がやりとりすることで身体のバランスを整えていることが分かってきた。

脂肪組織からはレプチンが出て脳に働きかけ食欲を抑え、胃からはグレリンが出て食欲を促す。腎臓はレニンを出すが、肝臓からのアンジオテンシノーゲンと肺からのACEが揃って初めて血圧が上がる。腸内細菌は、腸の免疫を調整するメッセージ物質を出している。

すべての細胞がメッセージを出し合うことで生命が維持されている、という考えが西洋医学の側から出てきているのは、相生相剋で五臓五腑を捉える東洋医学と、向いている方向が同じだと思った。

2026年9月の注記

この回で学んだ「自ずとバランスが整う」という見方が、その後どこへつながったかを書いておきたい。

2019年の時点では、ロルフィングやIMACと考え方が近い、というところまでしか書いていない。近い、で止まっている。

その後、2025年にアドバンスト・ロルフィングのトレーニングを受けた。そこで中心にあったのは、身体は自己調整できると信じる、という施術者の構えだった。整えるのは施術者ではなく、身体の側が整う。施術者の仕事は、そのための条件を作ることである。

同じことを、6年前に五行の相生相剋として教わっていた。どこかが乱れると、他の要素との関係で身体が自ずとバランスを取り戻す方向へ向かう。あのとき衝撃を受けたのは、細かい知識がなくても整う方向へ働きかけられる、という点だった。いま読み返すと、衝撃の中身はもう少し先にあった。整えるのが自分ではない、ということだ。

もう一つ。安部さんが繰り返した「つながりとして見ないと分からない」という言い方も、後になって意味が変わった。

Jeffrey Maitland は、施術に三つのパラダイムがあると整理している。癒し、矯正、そして全体である。矯正のパラダイムは、正しい状態が先にあることを前提にする。悪いところを見つけて直す形になる。

五行の相生相剋は、そのどれにあたるか。悪いところを特定して直すのではなく、関係の中で整う方向へ向かう。全体のパラダイムに近い。

2019年には、この区別を持っていなかった。西洋医学と東洋医学という2つの尺度があることまでは書いているが、施術の姿勢としてどう違うのかは書けていない。名前を知らなかったからである。

この講座について書いた記事

【総括】からだの学校【東洋医学】──6日間・6か月にわたる講座の総まとめ

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この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka