この記事は、2019年4月から10月にかけて受けた「からだの学校【東洋医学】」の記録に、2026年9月の視点から加筆したものです。末尾に、2026年から見て何が見えるようになったかを注記として加えています。
一番知りたかったこと
2019年9月8日(日)、講座の5回目。前半が血と水、後半が経絡だった。
この回を、首を長くして待っていた。
そもそもこの講座に通うことにしたのは、経絡をどう理解したらいいのかを知りたかったからである。
前年の11月、大阪のヒロさん(佐藤博紀さん)のIMACの内臓のクラスで、安部さんと初めて会った。参加者どうしでペアを組んで練習する時間に、ヒロさんと安部さんが実験を始めた。経絡の上にある筋肉の可動域を測り、ツボに刺激を与えると身体がどう変わるのか。そのとき、大きな変化が起きるのを自分の身体で確かめた。
あのとき何が起きていたのか。5日目にして、ようやくその中身に入った。
経絡は、身体の位置で並んでいる
経絡は、氣と血の通り道である。全身を一周していて、縦の流れである経脈と、経脈をつなぐ横の流れである絡脈の二つからなる。
正規のルートは全部で12本。十二正経と呼ぶ。スタートは肺で、氣は胃から上がってくる。
経絡には陰陽があり、強さに応じて三つに分かれる。
身体の前側は、太陰(肺・脾)と陽明(大腸・胃)。
身体の後側は、少陰(心・腎)と太陽(小腸・膀胱)。
身体の横側は、厥陰(心包・肝)と少陽(三焦・胆)。
つまり、経絡は身体の位置から覚えておくと便利だということになる。前、後、横。
講座では、グループに分かれて実際にやってみた。一人がモデルになり、テープで12本の経絡を貼っていく。すると、身体の各位置にそれぞれの経絡があることが目で確認できた。
この話は、筋肉の可動域を測るIMACと本質的に似ている。そう思った。
経絡はさらに、手と足に分けられる。手の経絡は胸にある臓、つまり肺、心、心包につながる。足の経絡は腹にある臓、つまり脾、肝、腎につながる。そして頭には、手足の陽経が来る。
五臓は、頭と首につながっていない
ここで、大きなことを教わった。
五臓、つまり肺、心、肝、脾、腎は、頭と首につながっていない。
これは何を意味するか。五臓、すなわち陰経をゆるめたとしても、頭や首はゆるまない、ということである。
五感を司るのは五臓のはずだ。それなのに、頭や首につながっていない。だとすれば、その情報を送り届ける役割を持つ何かを想定しなければならない。
それが五腑、つまり陽経の存在になる。
五臓と五腑を分ける理由は、ここにある。通り道の問題なのか、それともエネルギー不足の問題なのか。この区別をするために、二つに分けている。
そして安部さんは、ヒロさんのIMACなら可動域を測るだけでこの区別ができるので便利だ、と言っていた。
奇経八脈と、センターライン
基礎的な内容の上で、特殊な経絡の話へ入った。
一番驚いたのは、奇経八脈の話だった。
安部さんはFacebookでこう書いている。
学校でほぼスルーされる奇形八脈。 鍼灸師でも8本全部の名前を覚えていない奇経八脈。
ちょっと扱いヒドイよね…
その奇経八脈が、すごく役立つらしい。
八脈のメインは、督脈と任脈である。
督脈は、全身の陽経を管理する。身体の後側、背骨に沿って走る経絡である。
任脈は、全身の陰経を管理する。身体の前側、中心を走る経絡である。
どちらも、陰性・陽性の全体を整えるものだ。
だとすれば、これらを先に整えてしまえば、残りはなんとかなるのではないか。安部さんはそう考えて臨床経験を積んでいった。すると、正規の十二経で整える場所を絞り込むことができるようになったという。
そして、こう言った。
督脈と任脈は、身体のセンターラインを整える。
これには驚いた。ロルフィングの考え方に非常に近いからである。
ロルフィングの10回シリーズは、こういう順序になっている。表層のセッション(1回目から3回目)で表層を整え、深層とセンターラインへの準備をする。深層のセッション(4回目から7回目)で深層とセンターラインを整える。そして統合のセッション(8回目から10回目)でまとめる。
ソースポイントセラピーも似た考え方をする。ダイヤモンド・ポイント、ブロッケージ・ポイント、エントリー・ポイント、スティック・フィギュア。いずれもセンターラインを整えるためにある。
そして、Taozen で学んだ瞑想の一つである小周天。督脈と任脈を結んだもので、英語では Micro Cosmic Orbit と呼ぶ。小周天は瞑想と関わりが深く、実践していくには滞りなく回ることが重要になる。回すことによって、ボディワークでの手の感覚や、太極拳、気功のやり方にも変化が起きるという。
小周天では、意識すべき五つの場所がある。へそ、Sexual Center(恥骨のそば、関元)、会陰、仙骨、命門(へその後ろ)の五つである。
この五つへ反時計回りに意識を向けて循環させると、下丹田の周辺に循環している感覚になり、下丹田に氣が集まるようになる。最終的にすべてのポイントを回すことで瞑想が深まる。
これは、身体のミッドラインを整える感覚だった。
講座では、任脈の列缺と、奇経八脈の陰蹻脈の照海にアプローチすることで、ミッドラインが整うかどうかを、シールを使って参加者が体感していった。
後半、安部さんは施術ベッドを取り出して実演した。経絡やツボについては学ぶことがたくさんあるが、筋肉の可動域とツボが密接に関係していることを、目の前で見せてもらった。2時間があっという間に過ぎた。
2026年9月の注記
この回で受け取った問いが、その後どこへ向かったかを書いておきたい。
2019年の記事は「ロルフィングとIMAC、東洋医学の結びつきには無限の可能性を感じる」で終わっている。可能性を感じる、で止まっている。何がどうつながるのかは書けていない。
7年後の現在、書けるようになったことが二つある。
一つは、経絡が身体の形として扱われてきた、ということである。
前・後・横。手と足。この回でテープを貼って確かめたのは、経絡が身体の位置に対応しているという事実だった。氣という目に見えないものの通り道でありながら、並び方は身体の形に沿っている。
IMACが可動域という西洋の道具で経絡を測れるのは、ここに理由がある。経絡の実体が何であるかを決めなくても、位置が決まっていれば測れる。実体を規定せずに、測れる形だけを取り出している。
2018年に読んだダニエル・キーオン(Daniel Keown)の『閃めく経絡』は、筋膜こそが経絡の実体ではないかという説を立てていた。当時の私は、その問いを持ってこの講座に来ている。ただ、この回で学んだのは、実体が何かという問いとは別に、経絡は身体の形として扱われてきたという事実のほうだった。
筋膜と経絡がどうつながるのかについては、別に一つのページを設けて書いた。ここでは触れない。
もう一つは、センターラインである。
督脈と任脈がセンターラインを整える。ロルフィングの10回シリーズがセンターラインへ向かう。ソースポイントセラピーのポイントがセンターラインを整える。小周天が督脈と任脈を結ぶ。
2019年の記事は、この四つを並べて「近い」と書いている。並べただけで、なぜ近いのかは書いていない。
その後、経絡について書いたページで、この四つが同じ一本の線に別々の呼び名を与えているのだと整理した。センターライン、ミッドライン、督脈と任脈、スシュムナー。呼び名は四つだが、指しているのは同じ場所である。
あのとき驚いたのは、たまたま似ていたからではなかった。別々の場所から来た体系が、身体の同じところを見ていたからである。
この講座について書いた記事
【総括】からだの学校【東洋医学】──6日間・6か月にわたる講座の総まとめ
