2回目:足を整える──下半身の表層と、地面との関係

1回目で呼吸(上半身)が整うと、次は足(下半身)を扱う準備ができる。ロルフィングの2回目が扱うのは足全体だが、その中心にあるのは足裏だ。

2回目の位置づけ

10回の第1フェーズ(1〜3回目)は表層の解放にあてられる。空間軸でいえば、1回目と2回目で「上下」を扱う。上半身の呼吸で身体の上端を、足裏で下端を整え、縦軸の土台をつくる。

土台が下から積み上がるとはかぎらない。呼吸が浅いままだと胸郭の張力が全身に残り、足裏だけを緩めても戻ってしまう。上を緩めてから下へ降りる、というのがこの順序の理由だ。

そしてこの回には、もう一つの軸が入ってくる。足は左右に2つある。土台が2つあるということは、そこに左右という関係が生まれるということだ。胸郭は一つなので、1回目には左右がない。左右という軸が身体に入るのは、2回目からになる。

トレーニングでは、この回の目的を free the foot と表現していた。土台となる足が、自由に動ける状態になること。

そして2回目は、3つの系列が交わる場所でもある。表層の3回の真ん中であり、下半身を扱う回(2、4、6回目)の最初であり、そして呼吸と歩行という2つの動きを一つにしていく最初の一歩でもある。

呼吸と歩行は、誰もが一日中繰り返している2つの動きだ。1回目で呼吸を、2回目で歩行の土台を扱う。この2つが別々のものから一つの流れになっていく過程が、10回を通して続く。3回目で両者が出会い、5回目でより深い層で出会い、10回目で一つの流れになる。

硬い足裏は、失敗ではない

土踏まずが潰れている、足指が浮いている、ふくらはぎが張っている。こうした状態を、直すべき欠陥として扱わない。

足裏が固まるのは、床からの情報が読み取れないときに身体が取る、合理的な対処だからだ。足元が不確かなとき、身体は接地面を固めて揺れを止めようとする。合わない靴を長く履いてきた、痛みを避けて歩いてきた、不安定な場所で働いてきた。どれも足裏を固めるだけの理由がある。

固めることで、その人は立っていられた。2回目にすることは、その対処を取り上げることではない。固めなくても立てるという条件が整えば、身体はその対処を手放しはじめる。

なぜ足裏なのか

足裏が緊張していると、その張力は筋膜を通じて、ふくらはぎ・腿の裏・腰・肩・首まで連なる。逆に足裏が緩むと、背中側全体が緩む。

わかりやすいのは、腕を挙げる場面だ。腕を挙げる直前、身体全体を支えるために、足の裏側の筋肉(特に足裏からふくらはぎ)が先に働きはじめる。動きは足元から準備されている。肩が凝っている方のふくらはぎが硬い傾向にあるのも、この連なりの表れといえる。

ロルフ・ムーブメントでは、この「動く前にすでに始まっている働き」をPre-movementと呼ぶ。腕を挙げる前にヒラメ筋が働き、物を掴む前に前鋸筋が働く。何をするかよりも先に、どう支えるかが決まっている。

そして足裏がしっかり使えるようになると、背中の緊張が抜け、その内側にある深層筋へ手が届くようになる。4回目以降の深層セッションは、この段階を経て初めて成立する。

靴が引き受けてきたもの

足裏が使われにくくなっている背景には、靴がある。

厚底の靴は、かかとから着地しても衝撃を受け止めてくれる。かかとから強く踏み込むと、床から返る力は膝や腰に集中しやすい。裸足や薄底で歩くと、着地は自然と前足部や中足部へ移り、足裏全体で力を分散させるようになる。

これを靴のせいだとは考えていない。靴は足の仕事を肩代わりしてきた。クッションが衝撃を引き受けているあいだ、足裏はそれを分散する仕事をしなくてよかった。使われない機能は、感じ取れなくなっていく。土踏まずの感覚が育ちにくいのは、その結果として自然なことだ。

2回目のセッションで足裏が動くようになると、この肩代わりを少しずつ引き取り直していくことになる。裸足で過ごす時間を持つと変化が定着しやすいのは、そのためだ。

Eye of the Foot──足裏に目があると考えてみる

足裏に目があると仮定して、それを開いたり閉じたりする。Ray McCallがトレーニングで毎回紹介しているエクササイズで、Eye of the Foot(足の目)と呼ばれる。2025年のアドバンスト・トレーニングで実際に行った。

目を閉じて立つと、身体全体が縮み、地面との接触感が変わる。開くと、骨盤底と横隔膜がゆるみ、重力との関係が変わる。歩きながら開閉を繰り返すと、周囲との距離感がそのたびに違って感じられる。

面白いのは、足裏そのものを何も操作していないことだ。目を開くと仮定しただけで、骨盤底の張力が変わる。筋肉に指示を出したのではない。知覚の置き方が変わると、身体のほうが張力の配分を変える。単なる脱力とも違う。開いているときには緩みが促され、閉じているときには内側に芯が通る。その場に応じた張力を、身体が自分で見つけている。

このワークが扱っているのは、足だけではない。空間のほうだ。

空間は何もない場所ではなく、質を持ち、身体が応答する相手として存在している。対象そのものに意識を向けたときと、対象とのあいだの空間に意識を向けたときとでは、身体の反応が変わる。空間をみずみずしいもの、密度を持ったものとして感じたと語る参加者もいた。私の場合は、前景と背景を切り替える感覚がつかめた。この前後の切り替えは、3回目で扱う主題にそのままつながっていく。

2014年の基礎トレーニングの記録に、足裏が使える状態を「足にまるで目がついたような状態」と書いている。当時は比喩だった。11年後に、それが手順として渡されたことになる。

トレーニングで繰り返し言われたのは、パターンを修正しようとするのではなく、そのパターンを生み出している力と出会うことだった。足裏の硬さを直しに行くのではなく、その硬さがどこから来ているのかに触れる。この記事の冒頭で、硬い足裏を失敗として扱わないと書いたのは、そういう意味になる。

施術者の側にも同じことが起きる。触れようとするのではなく、その人の周囲や内側にある空間の質に耳を澄ます。そうしているとき、ロルファーは何かをする人ではなく、起こることを許す場のほうに近づいていく。

つま先と踵──視覚と聴覚のバランス

つま先と踵を感じ分けられるようになると、視覚と聴覚の使い分けまで感覚として理解が深まる。

目を使うと重心はつま先へ、耳を使うと重心は踵へ寄りやすい。理由は顔の構造にある。目は顔の前面、耳は目より後方に位置しているため、どちらのセンサーを優位に使うかが、そのまま重心の前後に反映される。

逆にいえば、「今、つま先と踵のどちらをより使っているか」がわかると、五感の使い方のかたよりにも気づける。ヨガのポーズでいえば、足裏のバランスが読めるようになると、目線が定まりやすくなる。

姿勢を支えるセンサーを、眼・足・内耳の3つからなる三角形として捉える考え方がある(Triangle of Support)。2回目で足を扱い、7回目で内耳を扱うのは、同じ三角形の別の頂点に触れているからだ。足だけを整えても三角形は安定しない。

3 system in the posture 2

足裏の関節が動きはじめると

ヨガには、手足の関節を一つずつゆっくり動かす「スークシュマ・ヴィヤヤーマ」という準備体操がある。呼吸と合わせて、ゆっくり、丁寧に、身体を感じながら動かすのがポイントだ。足指を一本ずつ動かす、踵を回す、手をグーパーする、といった地味な動きが並ぶ。

日本ヨーガ禅道友会の創設者である佐保田鶴治は、60代でヨガとこの準備体操に出会い、それまで優れなかった体調を取り戻して、80代後半まで生きた。

ヨガを指導する際には、必ずこの準備体操から入る。そのあとで立位や座位のポーズを取ると、足と手の使い方の感覚がつかみやすく、ポーズも安定する。座位では、瞑想に入りやすい身体になる。

経験的にいって、この準備体操でいちばん感じ取りにくいのが足裏だ。ロルフィングの2回目で足裏の緩み方がわかると、この準備体操そのものが変わってくる。

セッションの冒頭で観ているもの

冒頭のBody Reading(立ち方や歩き方の観察)では、次のような点を見ている。

  • 体重がつま先寄りか、踵寄りか
  • 土踏まずが潰れているか、逆に高く固まっているか
  • 足指が床に触れているか、浮いているか
  • 足首から下の動きが、膝・股関節・骨盤までつながっているか
  • 歩くときに、足の裏のどこで床を離れているか

施術のあとで同じ動きを確認すると、変化を自分自身の感覚として捉えられる。この確認の積み重ねが、セッション後の変化を持続させる。

セッションで整えていく条件

2回目で目指すのは、次の3つが成り立つ状態だ。

  1. 土踏まずを含めた足裏全体が、使える状態にある
  2. 足裏と下半身全体のつながりが感じ取れる
  3. 足裏から背骨まで、上半身への意識がつながる

足裏をほぐすことが目的ではない。足裏が床からの情報を受け取れる状態に戻ると、接地の仕方は自ずと変わる。地面に吸い付くような感覚は、そうしようとして生まれるものではない。条件が整ったときに、そうなってしまう。

セッションを受けているヨガのインストラクターの方でも、この足裏の感覚をつかんでいないケースは思いのほか多い。立位のポーズで足の感覚が定まらないと、背骨が不安定になり、支えるために全身が緊張する。ポーズを取っているのに疲労感だけが残る、という状態はここから生まれやすい。

この回で、身体が受け取る情報

2回目にしていることを、足底筋膜を緩めた、下腿を扱った、と手技で説明すると、実際に起きていることから離れる。

受け取っているのは、床がここにあるという情報だと考えている。支えは下にあり、足はそれを受け取る側でいてよい。この情報が届くと、身体は自分で支え方を組み替えはじめる。固めて支えるやり方が、受け取って支えるやり方に入れ替わる。

何をもって、整ったとするか

足裏が柔らかくなったかどうかを、それ自体では成果としない。柔らかくすることが目的なら、ほぐすだけで足りる。

セッションの終わりに見ているのは、重力との関係のほうだ。床から返ってくる力が、足首から膝、股関節、骨盤へと通っているか。重力が下へ引く負担ではなく、下から支えてくれる資源として働いているか。

接地感が戻るのは、その関係が変わった結果として現れる。

セッション後に起きること

  • 足裏が床に触れている面積が増える
  • ふくらはぎの張りが軽くなる
  • 立っているときの前後の揺れが小さくなる
  • 歩幅や着地の音が変わる
  • 腰・肩の緊張が、足元からの変化として抜けていく

セッションの後は、床との関係がどう変わったかを言葉にしてもらうことが多い。着地している感じがするか。床に体重を預けられるか。手放せるか。前へ押し出せるか。上へ伸びられるか。どこかへ向かって届いていく感じがあるか。

接地感が戻るというのは、こうしたことの総称になる。床に触れられるようになるとは、床を信頼できるようになることでもある。

歩くことから見た足を、もっと詳しく

ここでは、2回目のセッションで足に何が起きるかを扱った。足そのものの構造と、歩くという動作から見た足については、別に4回にわたって書いている。

一歩のあいだに足がどう潰れて締まるのか。足を動かしている筋肉が、なぜ足の中にないのか。脚がどこから始まっているのか。そして、歩行を重力からどう読むのか。この記事で触れた Eye of the Foot や Triangle of Support も、そちらで扱っている。

次の回へ

上下の軸が整うと、次は前後だ。3回目では、肩・腕・背骨・腿の側面にアプローチし、身体を平面から立体へと捉え直していく。

トレーニングでこの回をどう学んだかは、こちらに書いている。


大塚英文(Ph.D.)|認定アドバンスト・ロルファー™/ロルフ・ムーブメント・プラクティショナー 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士)。外資系製薬会社でメディカル・マーケティング業務に従事した後、2015年より渋谷でロルフィング®セッションを提供。「科学と実践の統合」をテーマに活動。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka