IMAC──21日間・6年にわたるトレーニングの総まとめ

2015年12月から2021年12月まで、6年をかけて、21日間。大阪の佐藤博紀さん(以下ヒロさん)から、IMACという方法を学んだ。

途中で2年半離れている。Basicのコースは二度受けた。ここでは、その21日で何を受け取ったのかをまとめておきたい。各回の記録は、それぞれの回の記事に書いた。この記事は、6年間を通じて、何を学んだのか、についてまとめる。

IMACとは何か

IMACは Integrative Movement Assessment & Conditioning の頭文字を取ったもので、ヒロさんが開発した方法だ。

ヒロさんは大阪・北浜でTEN〜the space for your Life & Bodyを主宰している。アスレティックトレーナー(NATABOC公認)であり、認定ロルファーであり、Muscle Activation Techniques®(MAT)の認定スペシャリストであり、SourcePoint Therapy®の認定インストラクターでもある。私がロルフィングの10回シリーズを受けた伊藤彰典さんの、師にあたる方でもある。

初めて会ったのは2015年5月、ミュンヘンで基礎トレーニングを終えた直後だった。

三つの疑問から始まっている

IMACがどこから来たのかは、ヒロさんご自身がIMACのサイトに書いている。読んで意外だったのは、体系や理論から始まっていないことだった。三つの疑問から始まっている。

  • 一つ目。ロルフィングのセッションで統合のために首にアプローチすると、首に触れる前にはなかった左右差が股関節の内外旋に出ることがあった。なぜか。
  • 二つ目。MATで筋出力を上げても、少し荷重して動くとすぐ戻ることがあった。局所に集中しすぎると全身のバランスが取れない状態になる。なぜか。
  • 三つ目。オステオパシーの内臓マニピュレーションのセミナーで、盲腸周囲の筋膜にアプローチすると、股関節の可動域と腸腰筋の筋出力が上がった。内臓と筋骨格系はどう関係しているのか。

こうした臨床での観察と疑問をもとに、様々な情報をまとめ、整理してできあがってきたのがIMACだ、と書かれている。答えではなく、疑問が出発点にある。

六つの源流

同ページに、IMACに影響を与えている療法と思想が六つ挙げられている。

  • アスレチックトレーニングからは、機能解剖学とバイオメカニクスによる客観的な評価。怪我や痛みだけでなく、パフォーマンスの向上と傷害の予防、未病を含めた全体の健康を見る視点。
  • ロルフィングからは、筋膜を通して見る解剖学。軸と付属肢の中心線。部位ではなく、他の部分との関係で見ること。
  • MATからは、可動域の制限はその動きに関わる筋肉が抑制されているから起こる、という考え方。
  • ソースポイントセラピーからは、幾何学的なバランスと情報という概念。ヒロさんはこう書いている。各筋群の特殊な可動域を三次元的に探求していき、体が本来のバランスに近い状態が分かってきたのは、この概念があったからだ、と。
  • オステオパシーからは、脊柱と自律神経、臓器の関係、神経リンパ反射点。発生の働きと機能から体の全体性と相互関係を理解する見方。頭蓋領域、バイオダイナミクス、頭蓋仙骨療法、内臓マニピュレーション、体性臓性反射。
  • 東洋医学からは、経絡の走行と位置、陰陽五行論との関係。十二正経だけでなく、奇経八脈との関係。

六つのうち、私が受講を始めた2015年の時点で講座に入っていたのは、前の四つまでだった。東洋医学が入ってくるのは2019年になる。

磁石と地図

IMACの中に、磁石を使う場面がある。経絡の原穴に磁石を置くと、その経絡に関わる可動域が変わる。足の少陰腎経と奇経八脈の陰蹻脈はN極で、それ以外はS極で可動域が向上する。

面白いのは、この発見の使われ方だ。ヒロさんはこう書いている。この磁石の影響の発見により意図的に制限を作ることができるようになり、地図を作っていくことが可能になった、と。

磁石は施術のための道具ではなく、地図を作るための道具だった。制限を人工的に作れれば、その経絡に対応する可動域と筋肉を、一つずつ調べていける。

その地図をもとに、各経絡に関係する筋群すべてを動かしていく方法が、後にM3(Meridian Movement Method、経絡動作法)になる。

名前が変わり続けている

受講した6年のあいだに、IMACの正式名称は三度変わっている。

2015年に受けたときは Integrative Movement Assessment Courses だった。2019年には Center of Integrative Movement Assessment になり、2020年からは Integrative Movement Assessment & Conditioning になっている。

現在は、最初の名称がコース群の名前として戻っている。Integrative Movement Assessment Courses が評価の側、Integrative Manual Approach Courses が手技の側。

名前の変化は、そのまま中身の変化でもあった。

受講したトレーニング一覧

日程日数クラス
12015年12月6日1イントロ編
22016年3月26日〜27日2上肢編
32016年4月2日〜3日2下肢編
42018年11月17日〜18日2内臓編
52019年1月27日1EROM
62019年3月16日〜17日2下肢編
72019年4月13日〜14日2上肢編
82020年11月7日〜8日2脊柱・内臓編
92020年11月28日〜29日2頭頸部編
102020年12月19日〜20日2統合編
112021年12月11日〜13日3統合編後

下肢編と上肢編は、二度ずつ受けている。

当時の課程は、BasicとAdvancedの二段階だった。Basicの三つ(EROM、上肢編、下肢編)とAdvancedの二つ(脊柱・内臓編、頭頸部編)を修めると、統合編に参加できる。参加資格が段階として決まっていた。統合編を終えた人だけが、統合編後のクラスに入れる。

各回の記録は、以下に書いた。

何を学んだのか?

評価軸

一番大きかったのは、施術の前と後を確かめる評価軸(物差し)が手に入ったことだ。

ロルフィングの基礎トレーニングは、感覚と身体のバランスに力点が置かれている。身体をどう見るかは繰り返し扱われる。ただ、その見方が当たっていたかどうかを、外から確かめる方法は課程の中にほとんど出てこない。解剖学の教科書は参考程度に見るように、と言われ続けていた。

人を機械として見てしまい、他の大切なシグナルを見逃してしまうから、という理由だったのだと思う。実際、感覚を養う段階ではそれが正しかった。

ただ、セッションの数が増えてくると、別のものが要るようになる。うまくいかなかったとき、何を変えればいいのか。それを知るには、変わったかどうかを測る手立てが要る。

IMACから学んだのは、そこだった。

関節の可動域を取る。筋肉ごとに分かれていて、一つずつ確かめられる。施術の前に取って、後にもう一度取る。変わっていれば、何が効いたのかを絞り込める。変わっていなければ、別のところを見る。

しかも、その物差しは他のことも測れる。メガネやマウスピースやスマートデバイスが身体にどう影響しているか。ソースポイントセラピーの前後で何が変わったか。そして、経絡の状態も。

10年後のアドバンスト・トレーニングで、Test、Intervene、Re-test という枠組みを教わることになる。何かをする前に確かめ、してから確かめ直す。名前を知ったのはそのときだったが、やっていたことは同じだった。そして、IMACで受け取ったもののほうが、深く、細かかった。

言語化

ワークショップというものは、たいてい教科書的なことを教える。IMACが違うのは、ヒロさんが臨床経験に即して、現場で得られた感覚を言語化しているところだった。

手順を渡されるのではなく、原理・原則を渡される。だから、その先を自分で考え、探究することができる。

これは学ぶ方の話である。身体で感じたことを言葉にできなければ、検証もできない。うまくいかなかったときに何を変えればいいのかも分からない。IMACで評価の手段を手に入れたことは、感覚を言葉にする手立てを手に入れたことでもあった。

ニュートラル

2021年12月、統合編後のクラスで学んだのは、何もしないことだった。

身体全体を傍観する。自分の意識が向く先を観察する。システムの変化を追わない。それまで、何かをするという意識でセッションを行っていた。何もしないことを意識すると、相手の身体は自ずと健全な状態を見つける。3日間の練習の後、施術の前後で可動域が劇的に変わったことに驚いている。

このクラスの講義資料が手元にある。日付は2021年12月8日、受講日の3日前。そこに「実技:ニュートラル」という節があり、実技が三つ続く。

3年4か月後の2025年4月、アドバンスト・トレーニングを受けた。24日間の中心に据えられていたのが、ニュートラルだった。

ニュートラルという語は、クラニオセイクラル・バイオダイナミクスの中心にある。

アドバンストの講師であるRay McCallはバイオダイナミック・クラニオセイクラルの指導者資格を持ち、ソースポイントセラピーの創始者Bob Schreiと共同で教えてきた。ヒロさんはソースポイントセラピーの認定インストラクターで、バイオダイナミック・オステオパシーはJim Jealousから学んでいる。

二人とも、同じ線の上にいる。

教え方と学び方

ヒロさんは、自分の考えを押し付ける人ではなかった。こちらの持っているものを認めたうえで教えてくれる。

一度、こちらが言葉を取り違えていたことがあった。「筋膜リリース」という言い方を記事に書いたときだ。ヒロさんは教室でも直接でもなく、自分のブログに「硬いところを緩める、リリースする」という考え方への違和感を書いた。読むかどうかは、こちらに委ねられていた。

この教え方は、性格の話ではないのだと思う。ヒロさんはソースポイントセラピーの認定インストラクターであり、オステオパシーの講座で15年以上通訳を務めている。ご本人がプロフィールに、オステオパスの先生方から知識だけでなく在り方も長年学ばせてもらっている、と書いている。

どちらの体系も、施術者がニュートラルであること、自分を手放すことを中心に置いている。教える内容と、教え方が同じところから来ている。

いまも続いていること

現在のIMACは、私が受けた形とはまた別のものになっている。

評価のコースと手技のコースの二系統に組み替えられ、筋テストは独立したクラスになった。脊柱・内臓編も、評価の側と手技の側に分かれている。

そしてM3という方法が生まれている。経絡動作法。各経絡に関係する筋群すべてを、子午流注の順に動かしていく自己ケアの方法だ。

これがなぜ作られたのかを、ヒロさんはこう書いている。一つ一つの動きを細かく知るには、かなり機能解剖学に詳しくないと難しい。それを学んでいくのがIMACだ。しかし、あまり細かく複雑に機能解剖学をみていくと、できる人が殆どいなくなってしまう。そこでM3では、筋肉ではなく、それらの筋肉を使った時の動きと位置を、解剖学用語を使わずに説明している、と。

学びの作業が、二段階で起きている。まず、経絡という捉えにくいものを可動域という誰でも測れる形にした。次に、そのIMACが細かすぎて渡せなくなったので、解剖学の言葉を外した形を作った。

おわりに

6年、21日。

学んだことを一つ挙げるとすれば、評価軸だと思う。施術の前と後で何が変わったのかを、自分の感覚とは別のところで確かめられるようになった。それがあるから、うまくいかなかったときに次の手が打てる。

そして、その物差しがあることで、他の体系も測れるようになった。経絡がそうだった。目に見えないと言われてきたものが、可動域という西洋の指標で見える形になっている。

この記事を書いた人

Hidefumi Otsuka