2020年10月6日、ソースポイントセラピー(以下SPT)のトレーニング、Module 3 の初日を迎えた。
どのようにしてSPTと出会い、今に至っているかについては別に書いた(「ソースポイントとの出会いから、今まで学んできたこと」参照)。
SPTのトレーニングは全3段階、合計12日間からなる。第一段階の Module 1 と第二段階の Module 2 は、TEN〜the space for your Life & Bodyを主宰しているロルファーの佐藤博紀さん(以下ヒロさん)から受けることができる。
実際、Module 1 は2015年10月10日から12日までの3日間(「「人間として形付けられるために必要な元となる情報」=「ブループリント」を知ること」「先生を選ぶことの大切さ〜フィードバックをどのように見るかの基準」「知識よりも感覚をどう使うのか?〜ブループリントへのアクセス」参照)。Module 2 は2015年11月21日から23日までの3日間に受講した(「ブループリントへの具体的なアクセスの方法+人の身体はどのように変化するのか?」「ソースポイントのトレーニングはどのように進むのか?どのようなテクニックがあるのか?」「身体にとって健全な情報というのは何か?」参照)。
第三段階の Module 3 は、創始者でアドバンスト・ロルファーの Bob Schrei と、瞑想の教師である Donna Thomson の2名から受講する。ヒロさんが通訳を担当する。
あいにくのコロナ禍のため、二人の来日が叶わなかった。そのため、ヒロさんのスタジオがある大阪の北浜と、創始者の二人が拠点としているサンタフェをオンラインで結ぶという、初の試みが行われた。
時差の関係もあり、午前中に二人とオンラインでつなぎ、午後はヒロさんから Module 3 のより細かいところを学んでいくのが1日のスケジュールになっている。
クラスは全6日間。10月6日から12日までで、9日は休みである。午前9時から午後5時まで開催され、参加者は12名だ。
初日はスライドも映し出し、二人が交互に話す形で進んでいった。
瞑想の教師である Donna Thomson から瞑想へのガイドがあり、居心地が良かった。その後、瞑想とSPTとの共通性についての話から入り、Module 1 と 2 で学んだことをどのように洗練させていくのかを取り上げていった。
瞑想は、呼吸を意識するだけではなく、周囲の音、感覚、マインドの中の考え、周囲の場などを同時に意識する。
SPTも、人間が人間として形付けられるために必要な元となる情報、すなわちブループリントを、決められたポイントに集中して意識を向けるが、同時に部屋の全体の変化にも目を向ける。
その共通性があるので、瞑想が重要であること、そしてSPTは瞑想を深めるのに手助けする、と改めて説明を受け、なるほどと感じた。
さらに今回は、その意識をどのように深めていくのか。Module 3 では、ブループリントに目を向ける際に、意図を洗練していくことも学ぶ。
そして、ブループリントに任せるので、介入しないことの大切さも学んだ。
Bob Schrei と Donna Thomson は長きにわたって禅を実践しており、良寛の言葉の引用や龍安寺の写真を含め、SPTのワークは日本との縁が深いことも理解できた。
やはり、一番面白かったのは、シャーマンとの関係を取り上げたときだった。
実は、Module 3 のクラスを受ける前に、Michael Pollan の『How to Change Your Mind: What the New Science of Psychedelics Teaches Us About Consciousness, Dying, Addiction, Depression, and Transcendence』(邦訳『幻覚剤は役に立つのか』、宮﨑真紀訳)を読んだ。
そこには、薬物が発見される前から、世界中で自然から採れる幻覚剤が先住民やシャーマンたちによって宗教的儀式に使われていたこと、そして幻覚剤がどのような歴史をたどって現在に至っているのかが、分かりやすく書かれており、面白かった。
中世ヨーロッパでは、麦角菌に汚染されたライ麦のパンにより、麦角中毒がしばしば起きている。この現象に興味を持った製薬企業の研究員、アルバート・ホフマンがLSDを発見した。続けてマジックマッシュルームからシロシビンも発見される。
こうして、製薬業界で幻覚剤というジャンルが誕生していく。
50年代から60年代にかけて、米国で一時200万人に及ぶ人たちが幻覚剤を使い、ヒッピーを含めた米国のカウンターカルチャーに大きな影響を与えた。精神療法にも使われており、アルコール中毒やうつ症状を含めた精神疾患に対して有効性を示していたという。
ただし、LSDは強烈な効果を持つため、一般大衆の間に広がることにより、服用中の事故が多発する。若者やヒッピー、反戦主義者へのLSDの使用者が増えることなどにより、最終的にLSDの非合法な販売は禁止へ向かった。今では全世界的に、特定の医療目的を除き使用は非合法だ。
チェコ人のスタニスラフ・グロフは、精神疾患に対してLSDを3000症例に使用した経験があったが、1960年代のアメリカで使用禁止が決定する。方向転換し、LSDと同じような効果を示すホロトロピック・ブレスワークという呼吸法を生み出した。参考までに、グロフは一時エサレン研究所で教えていたことを、以前に取り上げたことがある。
ポーランの本では、瞑想と幻覚剤の作用が似たような効果を持つことを、最新の脳科学の研究で示している。通常は、脳内の自我の作用を示すと言われるデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が働くことで、脳内の各部位は秩序を保っている。ところが幻覚剤や瞑想を行うと、DMNが抑制され、脳内の神経系の組み換えが起こるという。そして、この組み換えは4歳児の脳の状態に非常に似ていて、脳の可塑性が増すというのだ。
そして驚くべきことに、2016年以降、米国の医療当局(FDA)が、治療抵抗性うつ病や禁煙に対する効果を試すためのシロシビンの臨床試験を認めるようになり、今後、精神疾患や医療目的で使われるケースが増えていくことが予想される。
幻覚剤の科学や歴史的な側面が分かっていると、シャーマンへの理解が深まっていくのではないかと思う。
Donna Thomson と Bob Schrei は幻覚剤については全く触れていなかったが、シャーマンについて、病気との関係について、面白いことを紹介してくれた。
たとえば、シャーマンは病気をどう見ているのか。病気や怪我は、超自然との関係が崩れた結果として起こると信じられている。外部のネガティブなエネルギーの影響もある。これらの崩れた関係性を修復するのが、シャーマン・プラクティスだ。シャーマンが行うことは、人間とスピリチュアルな世界をつなげることで、適切な関係性が修復されること。邪気や外部の有害な影響を扱う。
シャーマンはこれらを、儀式やイメージを通じて行っていく。いわばヒーラー的な役割を担っている。
Bob Schrei と Donna Thomson が言うのは、SPTとシャーマンには共通点があるということだ。
双方とも、外部のエネルギーで流れを妨げるものを除くことを行う。そのうえで、SPTのほうは、ブループリントにアクセスさえすればいいので、方法は非常にシンプルだ、と話していた。
今回、二人と初めてオンラインで話を聞く機会があったが、話が非常に分かりやすく、SPTの位置づけ、禅との関係性、シャーマンとどう結びつくのかを含め、大いに役立つ情報が満載でよかった。
初日の午後は、Module 1 と 2 の手技の復習を中心に、参加者との交換セッションを行った。
いよいよ明日から、新しい手技を学ぶ予定だ。
2026年8月の注記
この記事には、Module 3 の初日に受け取ったものと、その前に自分で読んでいたものが、並んで書かれている。
読んでいたのは Michael Pollan だった。幻覚剤が古代から儀式で使われてきたこと。麦角中毒に興味を持った製薬企業の研究員アルバート・ホフマンがLSDを発見したこと。スタニスラフ・グロフがLSDを3000症例に使い、禁止後にホロトロピック・ブレスワークへ転じたこと。デフォルト・モード・ネットワークが幻覚剤や瞑想で抑制され、脳の可塑性が増すこと。そして2016年以降、FDAがシロシビンの臨床試験を認めるようになったこと。
エネルギーワークの最終課程に、脳科学と製薬史を持ち込んでいる。
その本が、連載になった
2026年のいま、この関心は独立した領域になっている。向精神薬を抑制薬、精神刺激薬、幻覚剤の三つに分けて整理し、幻覚剤だけで12本を書いた(「向精神薬の地図──抑制薬・刺激薬・幻覚剤を通して脳と社会を読む」参照)。
この記事に書き留めた要素が、ほぼそのまま連載の目次になっている。
そして、瞑想が神経科学とつながった
この記事の主題は、初日に受け取った瞑想とSPTの共通性だった。瞑想は呼吸を意識するだけでなく、周囲の音、感覚、考え、場を同時に意識する。SPTも、決められたポイントに意識を向けながら、同時に部屋全体の変化に目を向ける。だから瞑想が重要であり、SPTは瞑想を深めるのに手助けする、と。
いま同じことを、別の言葉で書ける。
デフォルト・モード・ネットワークは脳の自己生成回路で、過剰に活動すると過去の反芻や未来への不安が固着する。幻覚剤研究が明らかにしたのは、シロシビンがその活動を一時的に解体することだった。そして興味深いのは、長期の瞑想実践者が深い状態で示す脳活動が、それと類似した構造を持つことである。
幻覚剤研究の意外な贈り物は、薬物体験を通して、薬を使わない方法の科学的根拠が見えてきたことだと思う。瞑想、呼吸、身体ワーク(「幻覚剤研究が示す「自己」の再構築──意識変容のバイオロジー」参照)。
この記事で私が並べたのは、幻覚剤の歴史と、シャーマンの話と、瞑想とSPTの共通性だった。同じ日の記録に、たまたま並んでいるだけのように書いている。
いま読むと、それらは同じ場所を指している。
創始者たちは、幻覚剤には触れなかった
この記事には、はっきり書いてある。Donna Thomson と Bob Schrei は幻覚剤については全く触れていなかった、と。
二人が話したのは、シャーマンと病気の関係だった。病気は超自然との関係が崩れた結果として起こる。外部のネガティブなエネルギーの影響もある。それを儀式やイメージを通じて修復するのがシャーマンの役割である。そして、SPTとシャーマンは、外部のエネルギーで流れを妨げるものを除くという点で共通している、と。
私はそこに、幻覚剤の科学と歴史を重ねて読んでいた。二人が言っていないことを、自分の側で補って理解しようとしている。
そのこと自体は、悪いことではないと思う。ただ、この記事を読むときには、どこまでが二人の話で、どこからが私の読み込みなのかを、区別して読む必要がある。














