
エネルギーワークを辿るシリーズ(第2回|全3回)
はじめに
前回の「エネルギーワークは、何を扱っているのか」では、エネルギーという言葉が何を指すのか、施術者が実際に何をしているのかを扱った。この回では、ロルフィングの中で、エネルギーがどのように扱われてきたのかを辿る。
全体の地図は「エネルギーワークとは何か」にある。
ロルフィングの中にエネルギーの視点はあった
エネルギーワークは、ロルフィングの外から突然持ち込まれたものではない。創始者のIda Rolf自身が、人間の構造とエネルギーの関係に強い関心を持っていた。
1974年、Ida Rolfは協会の年次総会で次のように語っている。
I want to see what happens to the energy fields in and around an individual as you order his structure and what is the change in his behavior that parallels this change in energy. I want to see whether those fields get broader, whether they get brighter, whether they get more vertical, whether they get less confused.
人の構造を整えるとき、その人の内と周囲にあるエネルギー場に何が起きるのか。そして、その変化と並行して、行動がどのように変わるのかを見たい。その場が広がるのか、明るくなるのか、より垂直になるのか、混乱が少なくなるのか。それを見たい。
ここでIda Rolfは、身体構造だけを見ているのではない。構造の変化、エネルギー場の変化、そして行動の変化を、一つの連続した現象として捉えていた。
同じ講演で、彼女はさらに次のように述べている。
I hope that among you there are the kind of fish that will go out and bring in another school of fish . . . Not to get their aches and pains taken out, not to have their symptoms removed, but that they might contribute to the understanding of energy in the human universe.
痛みを取ってもらうためでも、症状を取り除くためでもなく、人間の宇宙におけるエネルギーの理解に寄与する人たちが、この中から現れてほしい。
Ida Rolfにとって、ロルフィングは単に痛みや症状を取り除く技法ではなかった。身体構造を入口として、人間におけるエネルギーとは何かを探究する仕事でもあったのである。
私は2016年3月、日本ロルフィング協会の総会で、米国のロルフィング・インストラクターであるRay McCallとCarol Agneessensから、Ida Rolfがロルフィングをどのように考えていたのかを聞く機会があった。
そこで紹介された話の一つが、1978年にIda RolfがRolf Instituteへロルフィングの権利を売った際、三つの学校を設立してほしいと要望したというものである。心理学的な側面を扱う学校をカリフォルニアに、医学的な側面を扱う学校をニューヨークに、スピリチュアルな側面を扱う学校をコロラドに置くという構想だった。実現はしなかったが、彼女が身体以外の側面も制度として残そうとしていたことが分かる。
また、弟子の一人に、ボルダーの山でエネルギースポットを探し、そこに座った感想を知らせてほしいと頼んだこともあったという。クラス中に感情を乱したクライアントには、太陽神経叢に触れると落ち着くと助言し、実際に変化が起きたとも伝えられた。
その一方で、Ida Rolfは次の言葉も残している。
Only thing that I can get hands on is physical.
私が手で触れ、コンタクトできるのは、身体的な部分だけである。
彼女がエネルギーを扱わなかったのではない。手が届くのが身体だったから、身体から入った。そのように読むことができる。この総会で聞いた内容は、「2016年日本ロルフィング協会総会に参加して──ロルフィングの歴史を知る」に記録している。
論争から特集号へ
Ida Rolf自身がエネルギーに関心を持っていた一方で、この領域をロルフィングの教育の中にどう位置づけるかは、長く定まらなかった。
2007年夏、Rolf Instituteの会報に「An Energetic Foundation for Rolfing」という講座の告知が掲載された。講師はBob SchreiとRay McCallで、ソースポイントセラピーに基づく内容だった。
告知後、協会の掲示板で激しい議論が起こり、協会がエネルギー的な講座を主催することの是非を問う抗議のメールが理事会へ届いた。異議を受けて、講座は継続教育委員会へ自主的に再提出され、二度目の承認を得た。
しかし、論争によって関心はむしろ高まった。座席とアシスタントが追加され、結果として数年ぶりに満席となる継続教育クラスになった。
翌2008年、Bob Schrei、Ray McCall、Jeff Maitland、Duffy Allenの四人が、ロルフィング協会誌(以下協会誌)上でこの問題について対話した。表題は「What Did Dr. Rolf Want?──ロルフ博士は何を望んだのか」であり、冒頭には1974年のIda Rolfの発言が置かれた。
この対話の中でBob Schreiは、ソースポイントセラピーが生まれた背景を説明している。Michael SalvesonとJeff Maitlandによるアドバンスト・トレーニングでは、ロルファーが鍼灸、チャクラ、バイオダイナミクスなど、外部の体系を借りて自分の仕事を説明していることが問題になった。借りてきた言葉だけで説明している限り、ロルフィング固有の仕事が何であるかは分からない。そこから、ロルフィングには固有のエネルギー的な基盤が必要だという課題が生まれ、長い探究を経てソースポイントセラピーへつながった。
そして2017年6月、協会誌は一号全体を「ロルフィングと非物理的な現実」という主題に充てた。Kevin Frank、Jeff Maitland、Ray McCall、Bob Schreiらが、それぞれの立場からエネルギー的な領域について論じた。2007年に激しい論争を呼んだ主題が、10年後には特集号になったのである。
ちなみに、「エネルギーワーク」という呼び方への疑いは、2017年に始まったものではない。2007年、Jeff Maitlandは、癒しがどのように起こるのかを四つに分けて示した。四つ目は身体に触れずに行うもので、一般にはエネルギー・ヒーリングと呼ばれる。Maitlandは、それをエネルギー・アプローチとは呼ばなかった。エネルギー的な技法は四つのすべての中に見出されるので、四つ目だけをそう呼ぶのは正確でない、というのが理由である。この四つについては、「癒しはどのように起こるのか──Jeffrey Maitlandの四つのアプローチ」に書いた。
触れ方はどのように変わったのか
この領域の発展には、ロルフィングにおける触れ方の変化も関わっている。
1980年代以降、John Upledgerを中心に、頭蓋仙骨療法やバイオダイナミックな考え方がオステオパス以外の実践者にも伝わっていった。これらはロルフィングのコミュニティにも大きな影響を与えた。Ida Rolfの時代に見られた強い圧だけでなく、身体と空間が自然に再編成されるための、より繊細な接触や施術者の在り方が重視されるようになった(「Jeff Maitlandの3つの問いかけ、在り方、知覚、自己調整」参照)。
2016年の日本ロルフィング協会総会でも、同じ流れが紹介された。オステオパシーの頭蓋仙骨療法や内臓マニピュレーションがロルフィングに入り、身体には、施術者が積極的に介入しなくても自ら変化する能力があることが明確になっていった。しっかりとした接触だけでなく、「その場にいること」そのものがタッチとして働く場合もある。
私は、この流れをソースポイントセラピーの側からも学んだ。2017年の補講では、Sacral HoldとGuardian Pointへの理解を深めるため、William Sutherlandから始まる頭蓋ワークの歴史と解剖学が紹介された。バイオメカニクス、ファンクショナル、バイオダイナミクスという三つのレベル、頭蓋ワークとエネルギーワークの関係、Guardian Pointとの違いについて学んだ。この日の内容は、「SPTSCに参加して──実践を通じて知識を深める」にまとめている。
ソースポイントセラピーを作ったBob Schreiは、認定アドバンスト・ロルファーであると同時に、バイオダイナミック・クレニオセイクラル・セラピストでもある。二つの系譜を持つ人物が作った体系だからこそ、その両方の影響が入っているのである。
ブループリントとは何か
ソースポイントセラピーの中心にあるのが、「ブループリント」という考え方である。人が人として健やかに存在するために必要な、根源的な秩序の情報を指す。
興味深いことに、この言葉はIda Rolf自身が使っていた言葉でもある。彼女は著書の中で、次のように書いている。
A joyous radiance of health is attained only as the body conforms more nearly to its inherent pattern; this form, this Platonic Idea, is the blueprint for structure.
健やかさの喜びに満ちた輝きは、身体が本来備えている型に近づいたときにのみ得られる。この形、このプラトン的な理念こそが、構造の設計図(blueprint for structure)である。
Ida Rolfは、健やかさを単に症状がない状態として考えていない。身体が本来の秩序に近づき、その人の構造が内在する型に沿っている状態として捉えている。
同じ著書の別の箇所では、さらに踏み込んだ問いを示している。
Is “balancing” actually the placing of the body of flesh upon an energy pattern that activates it? The pattern of this fine energy would not be as easily disrupted and might well survive, relatively intact, traumatic episodes that distort the flesh.
「身体を整える」とは、肉体を、それに生命を与えるエネルギーの型の上に置くことなのではないか。この繊細なエネルギーの型は容易には乱されず、肉体を歪めるような出来事が起きても、比較的損なわれずに残るのではないか。
ここで問われているのは、肉体そのものが秩序の源なのか、それとも肉体の背後に、それを組織する型が存在するのかということである。
Bob Schreiは2017年の特集号の冒頭にこの一節を掲げ、「構造の統合として私たちが行っていることは、身体をその型へ沿わせることではないか」と書いた。大学で建築を学んだ彼には、構造が何の上に成り立っているのかを問う習慣があったという。
この考え方は、Ida Rolfの著書の中だけにあったわけではない。彼女の生徒だったKarl Humistonは、Ida Rolfがクラスで「完全性のブループリント(blueprint of perfection)」という言葉を繰り返し使っていたと証言している。
さらに、ロルフィング協会の実践基準(Standards of Practice)にも、次のように記されている。
Equally fundamental is the recognition that each human being has an inherent internal pattern for optimal organization of form and function, which pattern is essentially self-organizing.
同じく根本的なのは、それぞれの人間が、形と機能の最適な組織化のための内在的なパターンを持っており、そのパターンは本質的に自己組織的である、という認識である。
The intent of Structural Integration is to identify and address that which keeps each person’s pattern from manifesting as a higher level of order and function.
構造統合の意図は、各人のパターンが、より高い秩序と機能として現れることを妨げているものを、見出して扱うことにある。
ブループリントという考え方は、一人の言葉としてだけでなく、協会の規定にまで入っている。
ソースポイントセラピーのブループリントは、この思想の延長線上にある。日々の緊張や感情、さまざまな経験によって、私たちはその秩序とのつながりを弱めることがある。施術者はブループリントへアクセスし、身体がその情報とのつながりを取り戻せるように働きかける(「「人間として形付けられるために必要な元となる情報」=「ブループリント」を知ること」参照)。
ブループリントという考え方は、「身体にとって何が健全なのか」という指標も与えてくれる(「身体にとって健全な情報というのは何か?」参照)。目指す方向が分かっていれば、そこから離れたときにも戻ることができる。ただし、施術者が身体を理想の形へ力ずくで運ぶわけではない。方向は知りながら、変化の過程は身体に委ねるのである。
ロルフィングにある二つの起源譚
ロルフィングの起源については、これまで広く語られてきた説明がある。Ida Rolfの生化学者としての経歴、筋膜への関心、ヨガやオステオパシーとの交流、スウェーデンボルグ、一般システム理論、コジブスキー、バックミンスター・フラーなどから影響を受け、ロルフィングを形づくったという説明である。この流れについては、「アイダ・ロルフという科学者」で詳しく書いている。
一方、Bob Schreiは2017年に、これとは異なる側面を紹介した。
彼のもとを訪れた新しいクライアントに、ロルフィングを受けた経験があるかと尋ねたところ、30回か40回受けたことがあるという。誰から受けたのかと尋ねると、答えはIda Rolfだった。
セッションについて最初に思い出したのは「痛かった」ということだった。しかし、最も記憶に残っていたのは、Ida Rolfが語った話のほうだった。彼女は、自分の仕事が科学者としての研究だけから生まれたのではなく、古代エジプトからチャネリングされた情報に由来すると繰り返し話していたという。そのクライアントが母親や母親の友人たちに確認すると、彼女たちも同じ話を聞いていた。
Bob Schreiが2015年、Ida Rolfの墓前で行われた追悼の会に寄せてこの話を公開すると、第一世代の教師たちからも「自分もそのクラスにいた」「彼女は多くの人に同じ話をしていた」という確認が届いた。そのうちの一人は、10回シリーズ自体が古代の学派における通過儀礼だったと聞いた、と伝えてきた。
Peter Melchiorも、授業でIda Rolfが「この仕事は少なくとも3,000年前から存在する」と述べたことを記録している。さらに、ある教え子によれば、Ida Rolfはロルフィングを教育の過程として説明すべきだと考えていたが、本当のところ、どの分野に属するかと問われれば「シャーマニズムである」と語ったという。
私は、科学者としての起源と、このような起源譚を対立するものとして読んでいない。どちらが本当かを判定する材料も持っていない。ただ、Ida Rolfが身体を科学的に探究しながら、同時に、科学だけでは説明しきれない背景も語っていたことは重要だと思う。
1950年代から60年代の米国では、正統と認められない実践を行う者が逮捕され、著作を破棄されることさえあった。Wilhelm Reichがそのような扱いを受けたのは1956年である。その時代に、科学者として筋膜を研究し、この方法を作ったとだけ説明するほうが安全だった。それにもかかわらず、Ida Rolfはもう一方の物語も隠さなかった。
この背景を知ると、ソースポイントセラピーがなぜ現在の形を取っているのかも見えやすくなる。最終課程の初日に、私は瞑想との共通性とシャーマニズムとの関係について学んだ。病は超自然との関係が崩れた結果として起こると考えられてきたこと、外部から入った否定的なエネルギーが流れを妨げること、それを儀式とイメージによって修復するのがシャーマンの役割だったことが紹介された(「初日を迎えて〜介入をしないこと・瞑想とSPTの共通性・シャーマンとの関係性」参照)。
当時は、エネルギーワークのクラスだからそのような話も出るのだろうと受け止めていた。しかし、いま振り返ると、創始者は、自らの体系がどの伝統に連なるのかを説明していたのだと思う。
ソースポイントセラピーは、ロルフィングの中にあるエネルギー的な空白を埋めるために作られたとBob Schreiは述べている。彼が埋めようとしたのは、ロルフィングに欠けていたものではなく、次第に語られなくなった側面だったのかもしれない。
次回は、ロルフィングの五つの分類の中で、なぜエネルギーの視点が要るのかを考える。
シリーズの全体は「エネルギーワークとは何か」にまとめている。
エネルギーワークを辿るシリーズ
- 第1回 エネルギーワークは、何を扱っているのか
- 第2回 ロルフィングの中で、エネルギーはどう扱われてきたのか(この記事)
- 第3回 なぜ、ロルフィングにエネルギーの視点が要るのか
