はじめに
私のセッションには、身体にほとんど触れない時間があります。一般に「エネルギーワーク」と呼ばれるこの領域について、3回に分けて書きました。このページは、その3回と、関連する記事を一望するための地図です。どこから読んでいただいても構いません。
最初に断っておくと、私はこの領域を自分から探し求めたわけではない。ロルフィングを学び始めた当時は、エネルギーワークという領域があることさえ知らなかった。何人かの先生との出会いを通じて、後から少しずつ、その存在と意味が見えるようになったのである。このページでは、その過程も含めて書いてみたい。
エネルギーワークという、ひとつの見方
はじめに、3回を貫く1本の背骨を示しておきます。
「エネルギー」という言葉は曖昧です。そこでこの3回では、エネルギーを特別な力としてではなく、身体というシステムに差し出される情報として捉えました。施術者が身体を治すのではない。身体が自ら変化できるように、そのための条件を整える。そしてロルフィングの中では、エネルギー的な領域は、身体へ働きかける五つの入口の五つ目に当たります。──というのが、以下の記事に共通する見方です。
まず読むなら
エネルギーワークを辿るシリーズ、全3回です。
| 回 | 何を扱うか | 記事 |
|---|---|---|
| 第1回 | エネルギーという言葉が何を指すのか。施術者は実際に何をしているのか | エネルギーワークは、何を扱っているのか |
| 第2回 | Ida Rolf の1974年の講演から、2007年の論争、2017年の特集号まで。触れ方の変化と、ブループリント | ロルフィングの中で、エネルギーはどう扱われてきたのか |
| 第3回 | ロルフィングの五つの分類の中の位置。何をもってロルフィングと呼ぶのか | なぜ、ロルフィングにエネルギーの視点が要るのか |
知りたいことから、辿る
| 知りたいこと | どこを読むか |
|---|---|
| エネルギーワークでは、何をしているのか | 第1回 |
| 意図と志向性は、どう違うのか | 第1回/意図と志向性の違い |
| Ida Rolf は、エネルギーをどう考えていたのか | 第2回 |
| クラニオセイクラル・バイオダイナミクスとの関係は | 第2回 |
| ブループリントとは何か | 第2回/「ブループリント」を知ること |
| なぜロルフィングに、エネルギーの視点が要るのか | 第3回 |
| 何をもってロルフィングと呼ぶのか | 第3回 |
私が学んだ二つの方法
ここからは、私自身がどのようにエネルギーワークを学んできたのかを紹介したい。
ソースポイントセラピー
ソースポイントセラピーは、米国のBob SchreiとDonna Thomsonによって作られたエネルギーワークである。
Bob Schreiは認定アドバンスト・ロルファーであり、バイオダイナミック・クレニオセイクラル・セラピストでもある。大学で建築、大学院で美術を学び、幾何学とヒーリングの両方に関心を持ってきた。Donna Thomsonは直観能力者であり、瞑想の教師でもある。二人とも、長年にわたって禅を実践している。
意外に思われるかもしれないが、Bob Schreiは解剖学の重要性も強調していた。そのことを、私は最初の講師である佐藤博紀さんから直接聞いている。ソースポイントセラピーは、手で身体を扱ってきた人物が作った体系なのである。
私は2015年10月から2020年10月までの5年間をかけ、延べ14日間の課程を修了した。Module 1とModule 2は大阪のTENで佐藤博紀さんから学び、Module 3は創始者のBob SchreiとDonna Thomsonから直接受けた。課程全体については、「ソースポイントセラピー──14日間・5年にわたるトレーニングの総まとめ」に記録している。
直傳靈氣
直傳靈氣は、1922年に臼井甕男によって開発された、日本発祥の手当てによる技法である。正式名称は「心身改善臼井靈氣療法」という。
靈氣は戦後の日本では事実上途絶えた一方、ハワイを経由して欧米へ広まった。1987年には、海外から逆輸入される形で日本でも再び知られるようになった。
直傳靈氣は、臼井の弟子である林忠次郎から直接教えを受けた山口千代子の系統を伝えている。「直傳」とは、林忠次郎から直接伝えられたという意味である。
私は2015年7月と12月、フランクフルト在住のロルファーである鎌田孝美さんから学んだ。その経緯や歴史については、「経緯と欧米人」「歴史的な流れ」「直傳靈氣と言霊」「ビフォー・アフター」にそれぞれ記録している。
二つの方法は何が違うのか
ソースポイントセラピーと直傳靈氣は、どちらも手を使い、身体にほとんど触れずに行うことがある。しかし、意識の向け方は異なる。
ソースポイントセラピーでは、ブループリントとつながったうえで施術を行う。手のひらは、面というより「点」として使う感覚に近い。施術者がエネルギーを送るのではなく、身体のプロセスへ委ねる感覚が強い。
直傳靈氣では、頭頂から足へエネルギーが流れ、それが手から自然に出ていくという意識を持つ。手のひらは「面」として使う。全身の構造を組み替えるというより、問題のある箇所へ働きかけるときに力を発揮する。
違いは、遠隔セッションの手続きにも現れる。どちらも、本人の許可を得ること、相手をイメージすること、名前と場所を意識する点は共通している。一方、直傳靈氣では儀式的な要素と生年月日を必要とするが、ソースポイントセラピーでは名前と場所があればよい。
エネルギーワークは一括りに語られやすいが、体系によって、何を必要とし、何を必要としないかが定められている。二つは同じものではない。しかし、どちらもロルフィングと組み合わせて使うことができる。
当時の私には見えていなかった
このシリーズで書いてきたことの多くは、後から分かったことである。
ロルフィングの基礎トレーニングを受けていた5か月間、私はエネルギーワークという領域があること自体を知らなかった。Ida Rolfがエネルギーの流れを重視していたことも、その側面をめぐって協会で論争が起きたことも知らなかった。
これは、単に私が見落としていたからではない。基礎教育の中で、この領域が慎重に扱われてきたことも関係している。
Jeff Maitlandは、エネルギーワークを基礎トレーニングで教えるべきではないと述べている。多くの学生を混乱させる可能性があり、扱うならアドバンスト・トレーニングの終盤がよいという考えである。これは2017年の特集号で語られた。
もっとも、私に見えていなかっただけで、この領域を実践している人はすぐ近くにいた。ミュンヘンで受けた基礎トレーニングの最終段階でアシスタント講師を務めていたAndrea Clusenは、2009年からソースポイントセラピーを実践していた。私がソースポイントセラピーに出会ったのは、そのトレーニングを終えて3か月後の大阪だった。
そして2025年、ロルファーの認定から10年を経て、エネルギーワークを中心に据えたアドバンスト・トレーニングを受けることになった。講師の一人はRay McCallだった。2007年にBob Schreiとともに、論争のきっかけとなった講座を開いた人物である。
24日間の課程については、「Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】──認定までの道のり」にまとめている。
いま思うこと
ロルフィングを学ぶうえで、誰から受けるかを選ぶことは大切だと、私は繰り返し書いてきた。しかし、選ぶという行為が可能なのは、選択肢が目の前に見えている場合だけである。存在すら知らない領域は、選びようがない。
私がエネルギーワークへ入ることになったのは、二人との出会いによる。ロルフィングのトレーニング中にヨーロッパで出会った鎌田孝美さんと、認定後に日本で出会った佐藤博紀さんである。どちらか一人との出会いが欠けていたら、私はこの領域に入らなかったと思う。
選ぶことと、出会うこと。学びには、その両方が必要である。
現在、セッションの中でエネルギーワークを使うとき、私が意識しているのは、何かを起こそうとしないことである。身体には、自ら整う力がある。施術者にできるのは、その力が働き始めるための場を整えることだけである。
受ける側にも、同じことが言える。身体に症状があれば、そこが気になるのは自然なことである。しかし、症状だけへ注意を集中させると、変化が起こりうる空間が狭くなることがある。最初にソースポイントセラピーを教えてくれたヒロさんは、それを「症状に引っ張られる」と表現した。
施術者の側で同じことが起これば、場はさらに狭くなる。施術者も受け手も、症状を無視するのではなく、症状だけにすべてを占有させないことが大切なのである。
Ida Rolfは1974年の講演で、ロルファーは病を治す者ではなく、「健康を呼び起こす者」であると述べた。そして、健康を呼び起こすためには、その型が何であるかを理解する必要があると語っている。
同じ講演で彼女が望んでいたのは、痛みや症状を取り去ってもらう人ではなく、人間の宇宙におけるエネルギーの理解に寄与する人たちだった。
エネルギーワークは、その「型」への理解に、別の角度から届くための道の一つだと、私は考えている。
関連する記事
各トレーニングで何を学び、どのような変化があったのかは、以下の記事に詳しく記録しています。
ソースポイントセラピー
- ソースポイントセラピー──14日間・5年にわたるトレーニングの総まとめ
- 3日目を終えて──エネルギーワークの中でトラウマをどのように扱うのか
- 4日目を迎えて──カルマとは「意志に基づく行動」のこと
- 5日目──感情面へのアプローチと遠隔を使ったセッション
直傳靈氣
アドバンスト・トレーニングで受け取ったもの
- エネルギーワークとボディワークを情報の観点で捉えてみる
- 「エネルギーワーク」と「身体意識」の関係
- ニュートラルに身を委ね、変化を待つこと〜YIELDワークとセッション間の変化
- 癒しはどのように起こるのか──Jeffrey Maitlandの四つのアプローチ
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- ロルフィングは疑似科学か?──身体の科学から読み解くロルフィング、筋膜研究の最前線と博士から見たエビデンス
- ロルファーへの道──12年のトレーニング記録
- Advanced Rolferの認定までの歩みについて【総括】──認定までの道のり
次に読むなら
ロルフィングが身体をどう見ているかについては、別の入口もあります。
- 筋膜という見方──ロルフィングは、身体の何に触れているのか──触れている組織のほうから
- 重力という見方──身体と重力の関係を捉える Tonic Function──身体と重力の関係のほうから
- 知覚という見方──ロルフィングは、身体の何を見ているのか──知覚のほうから
- 在り方は、どこから来るのか──ボディワーカーのための現象学──見ている施術者のほうから。意図と志向性の区別は、現象学から来ています
わかっていること、まだわからないこと
ここで紹介したのは、エネルギーワークが何を扱い、ロルフィングの中でどう位置づけられてきたかであって、何かの効能を約束するものではありません。ロルフィングの起源をめぐる二つの話についても、どちらが本当かを判定する材料を、私は持っていません。わかっていることと、まだわからないことの境は、正直に引いておきたいと思っています。
